インサイトスコープ

コーヒー飲用者の消費者インサイトを探る第2回 ユーザーの声を聞くコツ

Facebook X
三宮 智昭
味の素ゼネラルフーヅ株式会社
家庭用事業部家庭用第一部 Stickグループ 統轄マネージャー

三宮 智昭

前回のコラムでは、成長を続けるスティックコーヒー市場について解説しました。今回は、生活者のインサイトを発掘するための取り組みについて紹介します。
 
 

「甘さ」を軸にバリエーション展開

 
 
前回のコラムでは、成長を続けるスティックコーヒー市場について解説しました。今回は、生活者のインサイトを発掘するための取り組みについて紹介します。

AGF(味の素ゼネラルフーヅ)のスティックタイプのコーヒーは、ブレンディ、マキシム共に2002年に発売されました。緑のパッケージのカフェオレが最初の商品です。もっとも、現在のように「スティック」というカテゴリーを打ち出したのは2007年のことです。
 
 
20140905_02左は発売当初の商品。「スティック」カテゴリーとして展開したのは2007年から。
 
 
カフェオレから派生して、カロリーハーフや黒豆カフェオレ、カルシウムプラスなどの健康系の商品が生まれました。黒豆カフェオレは、「黒豆ココア」が流行したときに非常によく売れましたが、健康系の商品は浮き沈みが激しく、今も残っているのはカロリーハーフのみです。

こうした経験から、ブームに乗るのではなくしっかりとユーザーのセグメンテーションを行い、そのセグメントに基づいて需要のあるところでユーザーを獲得しようということで、まずは甘さのバリエーションをラインエクステンション(拡張)の基本戦略としました。

コーヒーは非常に嗜好性が強く、飲み方が人によって大きく異なります。ブラックで飲む人がいれば、砂糖とミルクをたくさん入れて飲む人もいます。飲む人それぞれのこだわりがあり、そうした消費者の嗜好を数字化し、データに基づいてラインを広げていこうと考えました。

かつてはスティックでコーヒーを飲むことに抵抗がある人も多く、その一番の理由はスティックに入っている製品の品質が良いわけがない、というものでした。突き詰めると、スティックで飲んだときの「甘すぎる」という体験にあることがわかったので、甘いものだけでなく甘くないものもバリエーションに揃えることで、過去の体験に起因するネガティブなイメージを変えるという狙いもありました。
 
 
20140905_03
 
 
 
 

グループインタビューは参加者の絞り込みが重要

 
 
商品の開発や、味覚のバリエーションを展開するにあたっては、消費者インサイトを探るための調査を行っています。方法は、デプスインタビューや訪問調査も行っていますが、個別のインタビューよりも対象者のスクリーニングのテクニック次第で課題をうまく引き出せるグループインタビューを採用することが多くなっています。

グループインタビューでは仮説の検証を基本的な目的にしているので、確かめたい仮説に適したユーザーを集めています。具体的には利用頻度や購入価格、競合商品に対する知識がどれくらいあるのか、といったことを調査票に落としこんでいます。難しいのは、知識レベル、競合商品をどの程度知っていて、どんな行動をとっているのか、ユーザー自身の認識と実態にはズレが生じることもあるので、その部分については注意深く絞り込んでいます。

グループインタビューの参加者を集めるのは調査会社に頼んでいますが、対象選びについては調査会社が音を上げるくらい細かく条件設定をやらないと意味がありません。単純に「ブレンディユーザーを連れてきてください」では良い結果を残すことはできません。

こうした調査から得たデータを元にバリエーションを展開していますが、その前提として商品の戦略論があります。発売当初からバリエーションを豊富にすることは難しいので、最初にポテンシャルの高いものから始めて、ひとつひとつ積み重ねていく必要があります。今、戦略のどの段階にあるのかという戦略のステージ論も重要で、ユーザーにどれくらい浸透しているのか、商品に対して知識を深めているのかを調査データも合わせて、次のステージへ進めるかどうか判断しています。現在は、カフェオレがかなり定着してきたので、コーヒー分野でスティックを広げてきたところから、「クリーミー&スイート」の基本バリューが通用する分野へ進出し、紅茶や抹茶、ココアを発売して結果が出ている段階です。

次回は、カテゴリービルドの戦略についてご紹介します。

おすすめのコラム

マーケティングコラム
あの世代の呼び方は何?各世代へのマーケティング方法もご紹介
「団塊の世代」や「Z世代」など、生まれた世代によってさまざまな名称が付けられています。マーケティング担当者であれば、それぞれの世代の名称と特徴を把握し、世代ごとにあわせたマーケティングを実施しましょう。 本記事では、それぞれの世代の呼び方について説明し、各世代に合ったマーケティング方法を解説します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
独身の人が増えすぎている?未婚の割合や増加の理由を解説
結婚して家庭をもつことが当たり前だった時代からは一変し、生涯を独身で過ごす人が増えています。なぜ未婚率が高くなっているのでしょうか。今回は、未婚の割合や未婚の人が増えている理由について解説します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
α世代の次の世代とは?β世代の特徴や取り巻く環境を予測しよう
今注目されているZ世代の次がα世代と呼ばれており、さらにその次がβ世代にあたります。Z世代以降は、デジタルネイティブであることが特徴ですが、マーケティング担当者や商品の開発担当者であれば、β世代とはどのような世代なのか、今と取り巻く環境がどのように変化しているのか気になるのではないでしょうか。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
中学生のスマホ使用時間の理想はどれくらい?スマホが及ぼす影響も紹介
近年、中学生からスマホを持たせる家庭が多いなか、使用時間の長さが問題視されているケースが多く見受けられます。スマホの使用時間が長いと学力に影響するといわれることもあり、子どもを持つ親からすると、「適切な使用時間の範囲で使わせたい」と考える方もいるようです。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
デジタルマーケティングコラム
世界スマホシェア率を日本と比較|人気のOSやメーカーは?
アプリ開発企業のマーケティング担当者の中には、世界のスマートフォンシェア率が気になっている方もいるでしょう。人気のOSやメーカーなどに関して、世界全体と日本との傾向の違いを把握しておくことで、マーケティングに活かせる面もあるかもしれません。
# デジタルマーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
犬派か猫派か?どちらが人気?性格や相性を徹底解剖!
ペットを飼っている人や、これから飼いたいと考えている人にとって気になるのが「犬と猫はどちらが人気なのか?」という点ではないでしょうか。また、犬派と猫派それぞれの性格や相性などについて気になる人も多いかと思います。本記事では、犬派と猫派どちらが多いのか、また性格や相性はどうかを徹底解剖します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
推し活の経済効果はどれくらい?市場規模と推し活マーケティングのメリットとは
若年層に適確なアプローチができないなど、従来のマーケティング手法に限界を感じてはいませんか。商品やサービスのターゲットとして、「推し活に力を入れる消費者」に絞る方法もあります。 推し活とは、推し(お気に入りのキャラやアイドルなど)を応援する活動のことです。今回は、推し活の経済効果や企業が推し活マーケティングに力を入れるメリットについて紹介します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
デジタルマーケティングコラム
人工知能(AI)で未来はどう変わる?人工知能の現状と予測される変化
まるで人間のように何でも質問に答えてくれる対話型AI「Chat(チャット)GPT」の出現に世界が揺れています。人工知能とは、人間のような知能を持つコンピュータシステムのことで、AIとも呼ばれます。例えば、スマートスピーカーやスマホの顔認証システムなどは人工知能の一種です。
# デジタルマーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
団塊の世代はいついなくなる?高齢化で生じる問題と対策を紹介
団塊の世代は、全人口に占める割合の大きさから、社会に多大なる影響を与えてきました。高齢化の話題に接して、団塊の世代の存在感に驚いた方もいるのではないでしょうか。今回は、団塊の世代の高齢化問題と企業の対策について紹介します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
ご相談・お見積もり依頼
【法人・個人様】
フリーダイヤルでのお問い合わせ
0120-198-022
※ モニター様からのお電話でのお問い合わせは受け付けておりません。
資料ダウンロード