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マーケティングの根本、「顧客中心」を問い直す第3回 「顧客のための行動」を、本当に出来ているのか?

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橋本 英知
株式会社ベネッセコーポレーション
家庭学習カンパニー 英語事業推進 担当部長

橋本 英知

「ユーザーファースト」「顧客中心」「顧客志向」、改めて最近よく耳にする言葉です。ソーシャルの時代となり、個と個がつながり、その影響力がどんどん高まっていく中で、必要不可欠なキーワード。しかし、どこまで本当に「顧客中心」で、企業が、ビジネスパーソンが、日々行動することができているのか?
「ユーザーファースト」「顧客中心」「顧客志向」、改めて最近よく耳にする言葉です。ソーシャルの時代となり、個と個がつながり、その影響力がどんどん高まっていく中で、必要不可欠なキーワード。しかし、どこまで本当に「顧客中心」で、企業が、ビジネスパーソンが、日々行動することができているのか?

3回目は、同じ組織に属する人たちが、「顧客のための行動」を、本当に出来ているのかについてです。このテーマは、本当に難しい問題です。当社の組織も、顧客セグメント別だったり、機能別だったりと、その時々の経営課題によって大きく再編成します。マーケティング観点だと「顧客セグメント別」の組織が理想的だとは思いますが、組織論になると話が大きくなりすぎてしまいますので、読者のみなさんがすぐに実行できそうなことから考えてみたいと思います。
 
 

結局、誰が顧客の方を向いているのか?チーム間での意思統一ができない

 
 
「権限をもって全体を見る、ブランドマネージャーがいればよいのですが……」という話をよく聞きます。機能別組織でベルトコンベア型に仕事が流れている。開発はプロダクトアウト思考、宣伝は旧来の手法の枠内に収めたがる、営業は流通ばかり見ている状態で、誰も顧客の方を見ていないのではないか。マーケティングの重要性は十分にわかってはいるけど、実践するのは現実的には難しく、机上の空論になりがちであると思われている方もいらっしゃると思います。
 
 
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チームの一人ひとりが、設定したKGIやKPIの「意味」を理解していく

 
 
機能別組織の各チームが、意思統一を行い、顧客のために行動をしていくために必要なことは、やはりプロセス指標(KPI=Key Performance Indicator)とゴール指標(KGI=Key Goal Indicator)の体系化だと思います。機能チームによってKPIは異なりますが、すべてのKPIは同じKGIにつながっていて、目的と手段があべこべにならないようマネジメントしていくことです。このKGIやKPIの設定は、どの企業でもある程度は設定されているでしょう。ここで重要なのは、指標の意味を顧客志向で解釈し、一人ひとりが腹落ちできているかです。特にKGIは、売上や利益という企業側の論理に陥りがちな指標です。これらを顧客志向で解釈すると、例えば以下のようになります。
 
 
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「商品・サービスを提供し、顧客から、満足・信頼を得る」という顧客とのコミュニケーションを永続的に行っていくのが売上・利益を高める目的です。利益を上げなければ、変化する時代の中で、新たな価値を生み出し、提供していくことができません。これは、既存顧客の信頼を裏切ることにもなりえます。よって、コストダウンというKPIも重要です。KPIは、各機能チームの実態によって異なるので、完全なる相互理解や意思統一は難しいかもしれませんが、それぞれがプロフェッショナルとして、同じKGIを目指していることが重要です。
 
 

顧客に価値をもたらさない「悪しき利益」では、組織の本質的な成長はできない

 
 
さらに、顧客とのコミュニケーションを「永続的に」行っていくためには、「売上・利益の質」をチェックする指標が必要になってきます。

「帳簿に悪しき利益と記載されるわけではないが、見分けるのは簡単だ。つまり、顧客とのリレーションシップを犠牲にして得られる利益が悪しき利益なのである。『だまされた』『不当な扱いを受けた』『無視された』『強要された』、顧客がこのように感じた行為から生じた利益は、すべて悪しき利益である。不公正であったりまぎらわしい価格設定からも、悪しき利益が生み出される。お粗末な顧客体験を招いてしまうような経費削減も同罪だ。悪しき利益は顧客に価値をもたらさないばかりか、顧客から価値を搾取してしまう。信頼を寄せてくれている顧客に法外な価格の製品や、顧客にふさわしくない製品を押しつける営業担当者は、悪しき利益を稼いでいることになる。複雑な価格体系で顧客を惑わせ、真の顧客ニーズを上回った金額を支払わせようとするしくみも、また悪しき利益の片棒を担ぐものである。」 
※出典:「顧客ロイヤルティを知る『究極の質問』」 フレッド・ライクヘルド著 堀新太郎監訳

悪しき利益ではなく、良い利益になっているかという質の評価ができる指標の一つが、この本で提案されている「NPS(Net Promoter Score)」です。「●●を友人や同僚に薦める可能性は、どのくらいありますか」という質問で、推奨者から批判者引き、推奨者の正味比率を算出し指標化します。これにより、顧客の信頼が積み上がっているかどうか、つまり顧客との長期的な関係性を築けているかを可視化することができます。NPSは、単純な売上・利益の成長率では見過ごしてしまう、本質的な組織の成長率を知ることができます。著者の言われるまさに究極の1問で算出できるため、取り入れやすい素晴らしい指標だと思います。
 
 
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オーナーシップ」マインドを持ち、顧客中心を実践していく

 
 
最後に、すぐに実践できることとして、オーナシップマインドについてお話しします。

「『オーナーシップ』とは、個人と組織、個人と仕事との関係を示す概念で、担当する仕事を“自分自身の課題”と主体的に捉え、強い情熱と責任感を持って取り組む姿勢のこと。与えられた職務やミッションに対する自発性、経営に対する当事者意識、参画意識などがオーナーシップを形成する要素です。」 

※出典:日本の人事部



最近では、特に小売業界で、従業員満足度(ES)が高まることで、顧客満足度(CS)が大きく高まり、業績が改善されたという話を耳にします。この従業員満足度の最上位は、責任感や情熱です。顧客との接点にいる従業員が、その仕事に情熱をもっていないのであれば、顧客に対してまともな商品・サービスを提供することは難しいです。これは、1回目にお話しした、「自分の家族や友人に薦められる商品・サービスを提供しているか」というシンプルな問いと同じことです。「顧客中心」を実践するには、自分の行動の方向を再点検することが重要だと思います。その一人ひとりの行動が、大きな変化に必ず結びついていくはずです。

以上、3回にわたって、「顧客中心」を問い直してみました。いずれも目新しさはないかもしれませんが、目の前の業務で忙殺される中で、忘れがちになってしまう、根本的なことだと思っています。3回のコラムが、読者のみなさんに少しでもお役に立てたなら幸いです。

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