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ブランドマネージャーの考え方第1回 ブランドの原点に立ち返る
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ユニリーバ・ジャパン・カスタマー
マーケティング ラックスヘア ブランドマネジャー
中川 晋太郎
「LUX(ラックス)」のブランドマネージャーを2013年から務めています。日本ではヘアケア製品を中心に展開しているブランドです。3回のコラムでは、ブランドに対する考え方や最近実施したキャンペーン、またブランドマネージャーの仕事についてご紹介します。
アジア・日本はヘアケア先進地域
ラックスはもともと1899年にイギリスで高品質な石鹸から始まったブランドです。日本では1972年に化粧石鹸からその歴史が始まり、ヘアケアブランドとしては今から25年前の1989年にスタートしました。それから今に至るまで、国内でもヘアケアのトップブランドのひとつであり続けています。
日本を含めたアジア地域は、ヘアケアの領域としては先進的な市場と言えます。そもそも、毎日お風呂に入って髪を洗う習慣がある日本は世界的に見ると非常に珍しい市場です。欧米では毎日シャワーを浴びても、必ずしも髪を毎日洗うとは限りません。コンディショナーまで使う人はアメリカでは6割程度、そのあとのトリートメントということになるともっと減るでしょう。
それらの地域と比べると、日本の消費者の意識は非常に高いものがあり、それゆえ新しい技術やトレンドが日本から生まれることは珍しくありません。同時に、非常に厳しい競争環境にあることも事実です。ユニリーバは世界のあらゆる地域で展開している企業ですが、グローバルのヘアケアカテゴリーの責任者は年に4~5回来日していることからも、日本市場への関心の高さがうかがえます。
価値観が変わっても求められるブランドとは?
ハリウッドスターをブランドのエクイティとして重視し、ナタリー・ポートマンやジェニファー・ロペスなどのビッグネームを起用し、女性が憧れる「美」に対するイメージを醸成してきたことが、今のラックスのブランドを形作ってきました。ところが、ここ10年くらいの間に日本人の美への価値観も多様化し、ハリウッドスターや、外国人に対する「無邪気な憧れ」が薄れてきました。そうした状況で、従来のままのコミュニケーションを続けてしまっていたために、有名だけどどこか無難なブランドだという印象が少しずつ発生してしまっていると考えております。
これまでブランドが大事にしてきた、人から「今日の髪、きれいだね」と言われてうれしくなってもらえるような気持ちの部分を醸成できるコミュニケーションを、もう一度していかなければならないとあらためて思っています。今の時代、ヘアケアの商品自体に対する消費者の顕在化した不満というものはほとんどありません。それは一方で、本当のニーズというものを見つけることが難しくなっていることを意味します。消費者自身も言語化できていない、本当の意味でのインサイトを理解することがスタートポイントとして大事だと思っています。
ヘアケア商品のことを考えるのはほんの一瞬?
これまでは、消費者はヘアケアに興味があるものという前提でコミュニケーションを設定していましたが、実際、一般の人が生活の中でヘアケア製品のことを考える時間はほんの一瞬でしょう。こうした視点に立って、どうすればヘアケアに注目してもらえるか、記憶に残ることなのかを考えると、これまで見向きもしなかったことや見せ方に気をつかいはじめます。
そうして作られたコミュニケーションに触れることで、ラックスというブランドがおしゃれなものとして、買い物袋からロゴが見えたときに誇らしく思ってもらえるものにしたいと考えています。
次回は、コミュニケーションの具体的な取り組み事例についてご紹介します。