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デジタルマーケターの心得第1回 デジタルに舵を切った「ロレアル パリ」
公開日:
日本ロレアル株式会社
コンシューマー事業本部 ロレアル パリ事業部 デジタル マーケティング マネージャー
宮野 淳子
化粧品ブランドのデジタルマーケティングを担う立場として、社内外の多くの方に助けていただいたり、調整を行いながら、日々さまざまな試行錯誤を繰り返しています。その一つの成果として昨年、オンライン動画を利用した施策で非常に好評を得ました。このコラムでは、その動画をはじめとする取り組みのほか、私が日々心掛けていることなどについて3回にわたってご紹介します。
デジタルに関わるすべてが持ち込まれる「何でも屋」
化粧品ブランドのデジタルマーケティングを担う立場として、社内外の多くの方に助けていただいたり、調整を行いながら、日々さまざまな試行錯誤を繰り返しています。その一つの成果として昨年、オンライン動画を利用した施策で非常に好評を得ました。このコラムでは、その動画をはじめとする取り組みのほか、私が日々心掛けていることなどについて3回にわたってご紹介します。今回は、私たちのブランドのマーケティングの変遷と、化粧品業界における位置づけをご説明します。
ロレアルはフランスに本社を置く世界ナンバーワンの化粧品会社で、日本でも多くのブランドを展開しています。その中で、私が担当しているのは「ロレアル パリ」というブランドです。
2003年に日本で展開をはじめた当初は、百貨店やGMSで美容部員を置く「カウンセリングビジネス」と呼ばれるビジネススタイルで、最初の来店時にカルテを記入してもらい、名前や住所、肌質などの個人情報をデータ化し、それを利用したダイレクトマーケティングを行っていました。しかし、ロレアル パリは2004年に美容部員を置かず、店頭の商品を顧客自身に選んでもらうセルフブランドに移行することになりました。2005年末にカウンセリングビジネスからセルフブランドに完全に移行するまでは、ダイレクトマーケティングも続けていました。
2006年に、日本ロレアルとしてデジタルマーケティングに特化することとなりました。社内にも部が設置され、2006年からは私もデジタルマーケティングを手がけるようになりました。「デジタルマーケティング」と一口にいっても、企業によって取り組み方はさまざまだと思います。当社ではPRからメディアバイイング、オウンドメディアのブランドサイト、ソーシャルメディアから、デジタルを通じて行うイベントやサンプリングなどのオペレーションまで、インターネットを介して行うすべてを扱っています。「デジタル」という言葉がつくとすべてこちらに持ち込まれるため、その分野の「何でも屋」のような状況で非常に慌ただしい部門でもあります。
競合他社の大量CMにデジタル施策でどう立ち向かうか
ロレアル パリというブランドは、スキンケア、メイクアップ、ヘアケア、ヘアカラーといった分野のすべてをまかなう世界ナンバーワンのトータルビューティーブランドですが、国内ではまだ若いブランドなので認知度がそれほど高くありません。また、他の多くの化粧品会社のブランドは、スキンケアやヘアケアなどのカテゴリーが絞られていて、ターゲット層やペルソナが決まっていますが、ロレアル パリの場合は、カテゴリーごとにターゲットや顧客の年齢層といった戦略が違います。スキンケアやヘアカラーといった商品群の中でもさらに分かれ、例えばヘアカラーは、おしゃれ染めは20代から30代ですが、白髪染めはもっと年齢層が上になるといった具合です。全ての商品が同じ店舗に並んでいるわけではなく、ドラッグストアで展開している商品もあれば、バラエティストアにしか置いていない商品もあります。市場は大変競争が激しく、美容部員がいて商品説明ができるわけでもないので、こうした点でも非常に難しいブランドといえます。世界的にも、ひとつのブランドの下にカテゴリーがまたがっているビジネスモデルは成功しにくいと言われています。特に日本では、我々の10倍以上もメディア予算を持つような国内大手の化粧品メーカーと競合するため、環境はより一層厳しいものになっています。市場は主にテレビCMに左右されるので、テレビCMを大量に出せるブランドや商品は有利になります。
トータルビューティーブランドとして、クロスカテゴリーでの取り組みは重要で、私たちにとっても課題となっています。ただ、限られた予算の中で、4つのカテゴリーに振り分けていくのは簡単ではありません。このような状況の中で、ブランドの価値を高めるため、市場でシェアを獲得していくためのマーケティング手法として活用したのがオンライン動画ということになります。
次回は、オンライン動画の施策についてご紹介します。