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「子育てシェア」が作る高齢化時代の地域コミュニティ 第3回 ユーザーとの接点を活かし、より良いサービスに
公開日:
株式会社AsMama
代表取締役CEO
甲田 恵子
ここまでお話ししてきた通り「子育てシェア」サービスは、子育て世帯のニーズをとらえ、たくさんのユーザーに利用頂いていますが、現在提供しているサービスは、アプリローンチ時から全て揃っていたわけではありません。つながり方、お礼の価格や渡し方も、トライアンドエラーを重ねた結果です。
リアルの声を反映し、短期間で改善を繰り返す
ここまでお話ししてきた通り「子育てシェア」サービスは、子育て世帯のニーズをとらえ、たくさんのユーザーに利用頂いていますが、現在提供しているサービスは、アプリローンチ時から全て揃っていたわけではありません。つながり方、お礼の価格や渡し方も、トライアンドエラーを重ねた結果です。サービス面、技術的な面も含め、私たちは、短サイクルで機能追加・改修を繰り返すアジャイル型の開発手法で改善してきました。計画的にゴールを決めて、設計し、開発を進める方法もありますが、アプリを展開するデバイスも、サービスも、変化のスピードが非常に早くなっています。スマートフォンも機種や内蔵されているOSのバージョンが変われば、そこに対応していく必要がありますので、常に変化に対応できる手法を取り入れています。
サービスについても、ローンチ当初は非常にシンプルで、つながる相手を検索するにも名前を入力する機能しかありませんでした。これでは不特定多数の人に自分の名前を検索されてしまう可能性があり、セキュリティ面で不安視する意見などから、携帯電話の番号下4桁で認証する仕組みを導入しました。ほかにも操作しやすいボタン位置の変更、ソーシャルメディアとの連携など、利用者のニーズを取り入れながら、使いやすさを阻害するようなものは削るといった改善もしています。こうした機能の追加・修正を1週間単位で繰り返しています。
ユーザーが使いやすいデザインを日々研究している
その点、私たちは「ママサポ」交流会等のリアルな現場を通して、ユーザーの生の声を聞くことができます。多くの交流会はママサポが中心となり運営をしていますが、事務局スタッフも一人のママサポとして参加をするケースも多くあり、交流会の中でユーザーが実際にアプリを使っている様子を直接見ることで、どこに使いにくさを感じるのか、それがなぜ起きているのかを知ることができます。
今でも開発側で考えた機能を追加することはありますが、一生懸命考えても、驚くほど利用者に響かないことが多いです。やはり、現場で直接ユーザーを見る、時にはその場で画面イメージの絵を作り、見てもらう方がより良い改善につながります。ユーザーとママサポ、事務局の距離が近く、一緒にサービスを作っていく感じが、私たちの大きな強みになっています。
子育てだけではなく、困りごとを助け合う社会を目指す
アジャイル型の開発は私たちに合った方法ではありますが、短期間で修正を繰り返すことを続けるだけでなく、数年に1度はシステム全体を見直す必要もあります。2013年のローンチから5年を迎えたこともあり、来年は大規模なリニューアルを予定しています。現在の「子育てシェア」は、子供の送迎や託児に特化した仕組みですが、リニューアルを機に、洋服のお下がりを譲り合ったり、食事を一緒にしたりするなど、様々なシェアが出来るようサービスを拡充します。子育てに特化していることに変わりはありませんが、モノやコトのシェアを安心・安全にできる仕組みになるよう考えています。以降もサービス改善を継続し、2020年までには在日外国人の方にも使ってもらえるように多言語化も予定しています。
多くの子育て中の方を中心にアプリを利用していただいている事で、AsMamaは子育て世帯の課題解決のために事業をしていると思われることも多くなりました。もちろん子育て世帯の支援は継続していきますが、それは私たちのミッションの50%で、もう半分は、支援する側の発掘・育成です。
現状、子育て世帯同士での助け合いが中心になっていますが、もっと多くの人に支援をしてもらえる仕組みにしたいと考えています。仕事を引退した高齢者の方や、社会に貢献したいと考える学生などをターゲットに、社会や地域の方を広く巻き込んでいきたいと思っています。事業をはじめたときに、妊娠中、出産後の女性の社会進出に課題を感じ、子育て支援を中心としたサービスを展開して参りました。今後は、高齢化とそれにともなう人口減少が社会の大きな課題となります。そこで、中高年の方が元気に活動し、自分の価値を感じてもらえるような仕組みにできればと考えています。仕事や子育ての先輩でもある中高年の方々がそれまでの経験を生かし、地域の子育てに参加してもらうなど、地域や社会でお互いの生活を支え合えるような世の中にするために、事業を展開していきたいと考えています。
子育てシェアの仕組みには、さらなる活用の幅がある