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所有から利用へ 自動車の乗り分けを実現する「Anyca」 ー 第1回 自家用車が6000万台あるという事実がニーズの証明

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 私たちオートモーティブ事業部は、2015年の9月にカーシェアリングアプリ「Anyca」をリリースし、サービスの提供を開始しています。アプリを介して、自動車を必要とする人と、自動車を利用しない時間にシェアする人をつなげる、カーシェアのサービスです。

「交通不全」解消のひとつの手段としてのシェアリング

 私たちオートモーティブ事業部は、2015年の9月にカーシェアリングアプリ「Anyca」をリリースし、サービスの提供を開始しています。アプリを介して、自動車を必要とする人と、自動車を利用しない時間にシェアする人をつなげる、カーシェアのサービスです。

 DeNAでは、さまざまな事業を展開していますが、その収益の中心はゲーム事業です。今後、より安定した企業の成長を目指していくうえで、将来性のある事業領域を検討していくなかで目をつけたのが移動、自動車に関する事業でした。

 近年、地方では少子高齢化や過疎化で公共交通機関のサービスが届かない地域も増えています。地方に限らず、さまざまな事情で移動に不便を感じる「交通不全」という大きな社会課題の存在があると感じ、その解消を目的にオートモーティブ事業部が立ち上げられました。

 交通不全の解消という枠組みにおいては、「自動運転」と「所有から利用」という大きな二つの流れがあります。後者の「所有から利用」という流れに沿ったものとして、カーシェアリングには機会があると考えました。事業を検討していた2010年前後から、Airbnb(エアビーアンドビー)が日本でも話題になり、シェアリングビジネスというものが認知されはじめました。アメリカではCtoCのカーシェアリングサービスが出ていたこともあり、自動車をシェアするビジネスは日本でも受け入れられるのではないかと考えました。

 日本にはおよそ6000万台の自家用車が存在しています。若者の自動車離れという言葉や、販売台数の減少が話題になっていますが、6000万台という数字は、自動車に対するニーズがあるという事実を証明しています。一方で6000万台ある自家用車の稼働率は3%から5%というデータもあり、そのほとんどは車庫に眠っている状態です。自家用車は車検や車庫代など、維持費もかかるので、乗らない時間を安心・安全にシェアすることでその負担を軽減することができるサービスには、ニーズが必ずあると考えました。

 これまで自動車は基本的に、購入しないと乗ることができないというのが常識で、そこには乗りたいと思っているのに乗れない人がいるという不整合もあります。また、自動車は用途に応じて車種やサイズなどで乗り分けたい、そう考える人も存在すると思っていました。



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車好きの「乗ってみたい」を叶えるサービスを提供する



 自動車をテーマにしたマンガ、アニメ、ゲームは常に人気ですし、書店に行けばさまざまな好みに合わせた自動車雑誌が販売されています。ジャンルとしてはニッチな部類かもしれませんが、常に一定数の愛好者がいるという意味で決して小さくない領域です。こうした状況を総合的に見て、潜在的なニーズがあると判断し、「Anyca」はスタートしました。

「車好き」を集め、車好きが「乗りたい車」を集める

 「Anyca」はBtoCではなく、CtoC、生活者同士が自動車をシェアするという、ほとんどの人がこれまでに体験したことがないサービスです。多くの人に馴染みがないので「なんとなく不安」という心理障壁が、利用においては高いハードルになります。そのためアプリは初めてでも利用しやすいように、シンプルなものにしました。

 チャットでオーナーとドライバーが直接やりとりできるようにして「この人とのシェアなら安心」と感じる、信頼関係を醸成できるような要素を盛り込んでいます。シェアされる自動車が表示される画面でも、自動車と一緒にオーナーの顔写真も表示することで「この人のこの車」という形で、人を感じられるようになっています。

 自家用車をシェアするときに気になるのは傷や汚れ、事故などによる破損です。保障、保険についてはサービスをはじめる前提として、絶対に必要だと考えていました。そこは東京海上日動火災保険と連携し、シェアと保険がセットになり、かつ車両保険もカバーされていて、オーナーの車が守られる仕組みを作っています。加えて、ドライバー、オーナー双方への利用時の説明や、レンタカーのように乗車前の車体チェックができるアプリも用意し、「安心」「安全」にシェアしてもらえる体制を整えました。


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保険会社と連携し安心・安全を担保している



 サービス開始当初のターゲットは、私たちがドライバーと呼ぶ自動車を利用する人と、オーナーと呼ぶ自動車をシェアする人で明確に分けました。利用者を増やし、サービスの認知を獲得していくためにドライバーは自動車専門誌を一定頻度以上で読む人や自動車に関するメディアを見るような「車好き」をターゲットに設定しました。

 CtoCのカーシェアリングビジネスでは、基本的にドライバーは近いところへしか乗りに行きません。そのため、サービス提供範囲の密度が重要になるのですが、サービスの認知も低く、オーナーもドライバーも少ない初期にそこまでの密度は求められません。「車好き」の人は、乗りたいと思う自動車があれば、多少遠くてもそこへ行こうという意欲がある可能性が高いので、ターゲット設定によってその範囲を広げることができます。

 ドライバーのターゲットが定まると、オーナーのターゲットは自然に「ドライバーが乗りたいと思うような自動車を持っている人」となります。オーナーに関してはこれに加えて、シェアによる維持費の削減という価値もあります。「自分の車が眠っている時間がもったいない」という感覚がないとシェアしようという意識にマッチングしないので、コスト意識のある人もターゲットの副次的な要素として含めました。

 こうして「Anyca」はサービス開始以降、車好きを集め、利用者として育てていくことで認知と利用の拡大を目指してきました。

 次回は、ドライバー、オーナーの集め方と、利用者間の交流についてお話しします。

馬場 光
株式会社ディー・エヌ・エー
オートモーティブ事業本部カーシェアリンググループ グループリーダー

馬場 光

宮本 昌尚
株式会社ディー・エヌ・エー
オートモーティブ事業本部カーシェアリンググループ

宮本 昌尚

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