インサイトスコープ
企業はミレニアル世代のインサイトをどう捉えるか ANA×Brother×ストリートアカデミー
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インサイトスコープProjectの一環として、「ミレニアルから団塊Jr世代までの心を捉えるシェアリングエコノミー」と題したセミナーが、6月29日に大阪のブリーゼプラザで行われました。
インサイトスコープProjectの一環として、「ミレニアルから団塊Jr世代までの心を捉えるシェアリングエコノミー」と題したセミナーが、6月29日に大阪のブリーゼプラザで行われました。同セミナーでは、ANAホールディングス デジタル・デザイン・ラボのチーフ・ディレクター津田佳明氏、ストリートアカデミー株式会社の代表取締役CEO藤本崇氏、ブラザー工業株式会社 新規事業推進部事業開発グループのスーパーバイザー若山勝氏が「先進企業によるパネルディスカッション」としてパネルディスカッションを行いました。今回の記事では、その模様をお伝えします。
まずは自己紹介をしていただけますか
津田(ANA):私はデジタルデザインラボというちょっと変わった名前の、2年前にできた部署から来ました。ANAはいま従業員4万人くらいの規模の会社ですが、もともとはヘリコプター2機16人から始まった、いまでいうベンチャー企業。創業時に立ち返って、別働部隊で好きにやっていいよ、というのがこの部署です。今、部署には13人いてそれぞれが思い思いにやっています。例えば、ドローン、宇宙開発、アバター、……様々なことを事業化できないかとやっています。シェアリングエコノミーとミレニアル世代への施策は、その中の一つです。どのようなシェアリングサービスを提供しているのでしょう
津田:ANAはシェアリングエコノミーの先進企業というわけではなく、まだまだ模索してやっているというのが現状です。我々は旅行と親和性の高いビジネスを行っているので、「旅」という切り口からシェアリングエコノミーをうまく取り入れていけないかと思っています。Airbnbとの連携もその一つ。将来的には民泊だけではなく宿泊と合わせた体験価値を取り入れながらやっていけないかと考えています。TABICAとの連携では体験ツアーの提供をしていて、従来のパックツアーでは体験できないような、地元ならではのディープな体験を味わってもらえるということで、地方自治体とも連携しています。また地方自治体がシェアリングシティに認定されていくお手伝いを、ANAグループのANA総研という会社がやっています。それぞれのプロジェクトが単発で終わるのではなく、掛け算で何かを生み出せないかと思ってやっています。藤本:私がストアカのサービスを始めたのには、原体験があります。それは、会社員時代に働きながら専門学校に通っていて、「学び」に対する世間のハードルの高さを感じていたことです。例えば、「映画監督になりたい」「シェフになりたい」と思っていても、会社の先輩が「現実を見なよ」といさめてくる。もっと自由にやりたいことをやっていいんじゃないかという思いがありました。日本には優秀な人材が多いにもかかわらず、会社と家庭の往復しか選べないという人が多いんじゃないかと思い、学びの選択肢が広げられるこのサービスを始めました。
シェアリングエコノミーのキーになってくる、いわゆる「ミレニアル世代」との付き合い方を教えてください
津田:これは利用者のグラフを見ると顕著なのですが、ミレニアル世代にはANAはあまり面白い企業だと思われていない。将来のことを考えると、ミレニアル世代を取り込んでいかなければならないという危機意識があります。例えばマイレージポイントはユーザー囲い込みの中心的なツールでしたが、ミレニアル世代には効かなくなってきています。藤本:逆にストアカのユーザー層はミレニアル世代ど真ん中で、7割が20代~30代になっています。サービスを始めた当初はシェアリングエコノミーという言葉もなく、ネットに詳しい若い人しか来なかったため85%ほどがミレニアル世代でした。今は7割まで「減ってきている」という状況です。性別でいうと、女性が65%。当初は男性ばかりなのが逆転しました。理由として、当初の講座ラインナップはビジネス系が多かったのですが、次第にヨガやフィットネスなどの自分磨き系が充実し、レビューがたくさんついてくると女性がかなり増えてきて割合が逆転しました。サービスの提供者、教える側の世代はちょっと上です。40代が最多で次に30、50代が続きます。自分が学んできたものを次の世代に継承したいという思いは、ある程度年齢層が上の方が強いようです。
一方で、ファミリー向けのイベントで、お子さんと一緒に写真撮りませんか、と提案させていただいたときは年配のご利用者もたくさんいらっしゃいました。お子さんだけなら七五三などで写真を撮ることはありますが、自分も一緒に撮ってもらうことは思いのほか少ないんですね。最後に自分が写真を撮ってもらったのは結婚式のとき、という方も多かったようです。
ライフタイムバリューというものがありますが、人生の中で写真を撮ってもらうというのは、いまだに非日常。普段の日常の中で、友達とか恋人とか家族と過ごしている時間というのは、気付かないけれども価値のある時間。そういうものを形にしたい。なので、世代はあまり考えていない。どの世代でも求められるニーズがあればいいなと思っている。
サービスの信頼感の醸成のために行っていることはありますか
津田:これはシェアリングエコノミーではなくてもそうですが、サービスの提供者側と受け取る側をなんとなく切り分けて考えがちですよね。もともとのシェアリングエコノミーはそういうことではなく、お互いに助け合う、互助精神から生まれてきたものです。ですから、あまり信頼感というものを意識せずとも、自然に「いつも借りているんだから、今度は自分も貸してみよう」という流れを作っていければいいのではないかと思っています。藤本:シェアリングエコノミー協会が出している認証マークは一つの目安になるかと思います。また、弊社のようなスタートアップ企業ですと、大企業とのコラボでたくさんの方に認知していただく機会を作らせてもらっています。
若山:シニアの方も含めて、「そういう時代になったんだね」とシェアリングを受け入れてもらうには、まだまだ時間がかかると思っています。それはある意味、終わらないゲームなので、地道にコツコツとサービスの良さを伝えていければと思っています。
(構成:インサイトスコープProject委員会)