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「満足」を超える「感動」を提供するエアークローゼット 第3回 デジタルとアナログの融合でサービスの最適化を図る

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株式会社エアークローゼット
代表取締役社長 兼 CEO

天沼 聰

 私たちのサービスでは、スタイリストが選んだコーディネートをお客様に届けています。お客様が自分の情報を登録し、それに応じたコーディネートを選び、コメントを付けて発送するという流れは前回、紹介した通りです。

お客様とスタイリストのマッチングにもシステムの力が

 私たちのサービスでは、スタイリストが選んだコーディネートをお客様に届けています。お客様が自分の情報を登録し、それに応じたコーディネートを選び、コメントを付けて発送するという流れは前回、紹介した通りです。

 お客様がWebサイトから会員登録するという工程以外は基本的に「人」が介在するので、一見するとアナログなサービスにも感じます。とはいえ、初回にお話ししているように私たちは「IT」によるサービスを提供したいと考えて起業しています。

 スタイリストは、貸し出すことができる服を一覧できる画面からコーディネートを選びます。しかしその画面に全ての服を表示してしまうと、10万点以上という膨大な数から条件にあったものを探し出さなければならず、大変な作業になってしまいます。ここに人工知能や、データサイエンスを活用し、選択の幅を最適化するシステムを導入しています。

 例えば、春夏のシーズンに冬物の服を表示していても意味はありませんし、誤って選んでしまうというミスにもつながります。スタイリストでも絞り込みは可能ですが、その前段階として、季節や用途にそぐわないとシステムで判断したものをあらかじめ除外できるようになっています。そうすることで、スタイリストがお洋服を選定する際、無意識のうちに、ミスが起こりづらい、最適なコーディネートを提供しやすい環境で職務にあたることができます。

服だけではなく、スタイリストのスキルもシェアする

 お客様の登録情報から絞り込みは行われていますが、好きな色やアイテムといった嗜好性についてはあえて反映しない場合もあります。そうすることでスタイリストのチャレンジの余地が生み出されているのです。私たちのサービスは、単なるもの探しのプラットフォームではないので、完全にお客様の意向を反映することはしていないのです。

 人は意識的、無意識的問わず、自分の枠の中で買い物をします。スタイリストのコーディネートがお客様の好みに従ってしまうと固定概念に広がりを与えられないと考えています。私たちが提供したいのは、お客様が自分に似合うと考える枠の少し外にある、気づいていないだけで本当はたくさんあるはずの“実は似合う服”との出会い体験をしてもらうための仕組みです。

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 今、提供しているサービスがその体験のための最適なものになっているかどうか、検証は必要ですが、そうありたいと思いながら日々サービスを改善しています。私たちが「セレンディピティ」と表現している、突然の良い出会いをいかに生み出していくのか。現状ではシステムの助けを借りながら、スタイリスト個々の感性を中心にしていますが、ほかにも方法はあると思っているので、いろいろ試していきたいと考えています。

 お客様が自分で選ぶという方法もあると思いますが、その選択はあえてしていません。私たちのチャレンジは、お客様が自ら選ぶ以上の体験を約束するという点にあります。難易度は高いものだと認識していますが、その選択がお客様の感じる価値、感動に繋がると考えています。

 私たちのスタイリストは、勤務場所も時間も自由に働いてもらっています。副業的にする人や、マタニティ休暇中に自宅で働く人など、スタイリストの属性も多様です。服のシェアを提供すると同時に、スタイリストのスキルをシェアすることも想定してサービスを設計しました。

 近年、特にモノのシェアを行うサービスについては、所有欲や生活コストを下げられる、断捨離に繋がるというメリットを語られがちです。しかし、私たちのお客様からは、そうしたものよりも、「ファッションが楽しくなった」という体験価値を評価していただいています。今後も、日々の生活に彩りをつけたい人々のために、より良い体験を提供できるようなサービスを目指していきたいと考えています。

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