インサイトスコープ

寺田倉庫、倉庫業から「余白」を創造するプロフェッショナルへ第1回 このままでいいのか、危機感から生まれた新事業

Facebook X
 私たちは1950年に創業した倉庫会社です。2012年に「誰でも、どこからでも、いつでもすぐに倉庫が持てる」をコンセプトにweb収納サービス「minikura」を立ち上げました。この3回のコラムでは、私たちが「minikura」を立ち上げた理由や、サービスをはじめたことで起こった変化などについてお話ししたいと思います。

次世代の倉庫ビジネスを模索

 私たちは1950年に創業した倉庫会社です。2012年に「誰でも、どこからでも、いつでもすぐに倉庫が持てる」をコンセプトにweb収納サービス「minikura」を立ち上げました。この3回のコラムでは、私たちが「minikura」を立ち上げた理由や、サービスをはじめたことで起こった変化などについてお話ししたいと思います。

 「minikura」誕生以前、倉庫会社は、法人向けの倉庫業務で顧客獲得のために施設や人を増やそうという拡大路線を取る傾向にありました。一方、個人向けの貸し倉庫、いわゆるトランクルームは、不動産業界からの参入が増え、そのノウハウを生かして街中のビルや空いた土地にトランクルームを展開し、急速に増加させていました。
 法人向けでは拡大路線、個人向けは競合企業の増加により、価格競争がおき、いかに安くサービスを提供できるかが問われる市場環境となっていったのです。このまま業界内の動きに合わせていくべきなのか。その危機感から、次世代の倉庫ビジネスを目指すべきなのではないかと考えるようになりました。

 次世代の倉庫ビジネスを開発するうえで、私たちがこだわったのは寺田倉庫という会社のDNAは何なのかということです。創業当初、寺田倉庫は米の保存・保管業務を行っていました。米に最適な空間は何か、最適な取扱い方法はどんなものかを考え、提供してきた歴史があります。今では預かる物が米からワインや美術品、メディアなどへと変わったものの、預かるものの本質を追求するDNAは脈々と受け継がれています。
 もうひとつこだわったのが、自らサービスを作り、マーケティングも仕掛けていこうということです。これまでの倉庫会社はお客さまに場所を提供して自由に使ってもらうという、ある意味受け身な部分がありましたが、そうではなく自分達で提供する価値を発信して、お客さまに届けていくことを目指しました。
 また、社会情勢や業界トレンドが変化したときにも柔軟に対応できるよう、人や施設といった資産面ではなく、新しい仕組みやこれまでにない取り組みを拡大していくことで、オンリーワンの事業やプロジェクトを生み出す道を選びました。社内でも社員全体でこうした意識を持つようにマインドセットを行いました。


20170818_02


minikuraは預けたい物を箱で送るだけ。


20170818_03


minikuraのマイページ。預けた物をWeb上で管理できる仕組み。

「預けた物を忘れてしまう」を解消

 こうした流れで生まれたのが「minikura」です。私たちは1970年代から国土交通省からの認定第一号を受け、個人向けトランクルームを展開していましたが、シェアとしては、不動産業の会社が展開するものが大きくなっていたため、もう一度個人向けトランクルームの課題を見つめ直し、それらを解消しようという試みの結果生まれたのが「minikura」です。

 トランクルーム利用者の方を中心としたヒアリングや、問い合わせを集計・分析したところ、従来のトランクルームに最も多い課題は預けた物を忘れてしまうということでした。また、自宅以外の場所にお金をかけて物を置くということに対するネガティブなイメージもありました。預けた物が何であったのか、あるいは預けたことすら忘れてしまわれても、月々の料金は自動的にお支払いいただくことになります。このお互いに幸せとはいえない状態を解消し、イメージもポジティブに変えていくことが「minikura」のサービス開発におけるチャレンジになりました。

 これまで法人向けの倉庫事業では、流通加工という作業で荷物を開梱し、ラベルを貼るような工程を請け負っていました。これを個人向けにも応用することで、1点1点預かった荷物を管理し、何を預けたのか忘れてしまうという課題の解消を目指しました。預かった物を、Webのマイページから写真やリストで管理できるようにしたのです。預かった物を1点1点管理することで、どんな物をお客さまが預けられているのか、という分析ができ、サービスも展開しやすくなりました。

 また、「minikura」は、月額1箱250円で送料込みという基本プランを設けるなど、料金体系も分かりやすくしています。申し込みもWeb上でスムーズに行うことができ、借りることへのハードルをできるだけ下げています。こうして「minikura」が2012年9月にスタートしました。

 次回は「minikura」のネーミングやターゲット、立ち上げたことで生まれた変化についてお話しします。


20170818_04


1箱月250円、最大30点アイテムまで、スタッフが撮影し、マイページで管理できる。
月森 正憲
寺田倉庫
上席執行役員

月森 正憲

柴田 可那子
寺田倉庫
MINIKURAグループ サブリーダー

柴田 可那子

関連コラム

マーケティングコラム
あの世代の呼び方は何?各世代へのマーケティング方法もご紹介
「団塊の世代」や「Z世代」など、生まれた世代によってさまざまな名称が付けられています。マーケティング担当者であれば、それぞれの世代の名称と特徴を把握し、世代ごとにあわせたマーケティングを実施しましょう。 本記事では、それぞれの世代の呼び方について説明し、各世代に合ったマーケティング方法を解説します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
独身の人が増えすぎている?未婚の割合や増加の理由を解説
結婚して家庭をもつことが当たり前だった時代からは一変し、生涯を独身で過ごす人が増えています。なぜ未婚率が高くなっているのでしょうか。今回は、未婚の割合や未婚の人が増えている理由について解説します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
中学生のスマホ使用時間の理想はどれくらい?スマホが及ぼす影響も紹介
近年、中学生からスマホを持たせる家庭が多いなか、使用時間の長さが問題視されているケースが多く見受けられます。スマホの使用時間が長いと学力に影響するといわれることもあり、子どもを持つ親からすると、「適切な使用時間の範囲で使わせたい」と考える方もいるようです。 今回は、中学生がスマホを使う時間の理想をはじめ、使用時間が長いとどのような影響を及ぼすのかを解説します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
犬派か猫派か?どちらが人気?性格や相性を徹底解剖!
ペットを飼っている人や、これから飼いたいと考えている人にとって気になるのが「犬と猫はどちらが人気なのか?」という点ではないでしょうか。また、犬派と猫派それぞれの性格や相性などについて気になる人も多いかと思います。本記事では、犬派と猫派どちらが多いのか、また性格や相性はどうかを徹底解剖します。弊社で行ったアンケート結果もふまえて解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
α世代の次の世代とは?β世代の特徴や取り巻く環境を予測しよう
今注目されているZ世代の次がα世代と呼ばれており、さらにその次がβ世代にあたります。Z世代以降は、デジタルネイティブであることが特徴ですが、マーケティング担当者や商品の開発担当者であれば、β世代とはどのような世代なのか、今と取り巻く環境がどのように変化しているのか気になるのではないでしょうか。今回は、β世代の特徴やβ世代を取り巻く環境について解説します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
推し活の経済効果はどれくらい?市場規模と推し活マーケティングのメリットとは
若年層に適確なアプローチができないなど、従来のマーケティング手法に限界を感じてはいませんか。商品やサービスのターゲットとして、「推し活に力を入れる消費者」に絞る方法もあります。 推し活とは、推し(お気に入りのキャラやアイドルなど)を応援する活動のことです。今回は、推し活の経済効果や企業が推し活マーケティングに力を入れるメリットについて紹介します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
団塊の世代はいついなくなる?高齢化で生じる問題と対策を紹介
団塊の世代は、全人口に占める割合の大きさから、社会に多大なる影響を与えてきました。高齢化の話題に接して、団塊の世代の存在感に驚いた方もいるのではないでしょうか。今回は、団塊の世代の高齢化問題と企業の対策について紹介します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
デジタルマーケティングコラム
【TikTok】バズる時間帯はいつ?曜日ごとのバズりやすさとあわせて解説
TikTokは短期間で多くのユーザーにリーチできるプラットフォームです。しかし、効果的な運用には、適切な投稿時間を見極めなければなりません。社内でTikTokの運用を開始する際に、まず押さえておくべきなのが「バズりやすい時間帯と曜日」です。今回は、TikTokでバズるために最適な投稿時間や曜日について詳しく解説し、投稿時に押さえておくべきポイントについても紹介します。
# デジタルマーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
デジタルマーケティングコラム
SNSのエンゲージメントとは?SNS別の確認方法や向上施策も紹介
最近では中小企業でも、流入チャネルを増やすためにSNS活用を始めるところが増えてきました。SNSの運用を成功させるためには、できるだけ多くのエンゲージメント(リアクション)を得ることが重要です。今回は、SNSにおけるエンゲージメントについて、確認方法や向上させるための施策を解説します。
# デジタルマーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
ご相談・お見積もり依頼
【法人・個人様】
フリーダイヤルでのお問い合わせ
0120-198-022
※ モニター様からのお電話でのお問い合わせは受け付けておりません。
資料ダウンロード