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三和交通、自由な発想でタクシー業界に新風 ー 第1回 新卒採用が増加した独自サービス

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三和交通株式会社
代表取締役社長

吉川 永一

 私たち三和交通は、神奈川県横浜市を中心に東京23区と多摩地区、埼玉県といった首都圏でタクシー事業を展開しています。今回のコラムでは、グッドデザイン賞を受賞した「タートルタクシー」や「心霊スポット巡礼ツアー」、「裏ヨコハマ探索ツアー」などの新サービスを始めた狙いや、顧客満足を向上するための取り組みについてお話ししたいと思います。

若年層の興味をひく新サービス

 私たち三和交通は、神奈川県横浜市を中心に東京23区と多摩地区、埼玉県といった首都圏でタクシー事業を展開しています。今回のコラムでは、グッドデザイン賞を受賞した「タートルタクシー」や「心霊スポット巡礼ツアー」、「裏ヨコハマ探索ツアー」などの新サービスを始めた狙いや、顧客満足を向上するための取り組みについてお話ししたいと思います。

 サービスを提供している車両の台数は、横浜で220台、東京は23区内の100台と多摩地区の150台、埼玉で90台です。エリアごとの台数は多くはありませんが、タクシー業界内でこれほど広範囲で展開している会社は珍しいと言えます。おかげさまで、集客については成長を続けています。売上額は、景気に左右される面もあり、平均単価が落ちていますが、お客さまに私たちのタクシーを呼んでいただいた回数は10年間で前年を下回ったことはありません。

 また、この10年の間で同業の会社を買収し、タクシーの台数を増やしています。買収して会社を拡大する方法をとっているのは、タクシーの保有台数に法規制があるためです。タクシーは公共性の高い輸送機関ですので、台数や運賃に規制があるというのが、他の業界との違いです。

 いまタクシー業界が抱えている大きな課題は、高齢化に伴う労働力不足です。2015年、タクシードライバーの平均年齢は59歳。高齢のドライバーが退職したり、パートタイムへと勤務形態を変えたりしていくと、当然ながら正社員のドライバーが不足します。そこで重要となるのが新規採用と、採用した若手ドライバーの離職防止です。

 タクシードライバーというと別の企業で働いていた人が脱サラなどで就く職業のイメージもあると思いますが、近年私たちは、新卒での採用にも力を入れています。実は、グッドデザイン賞を受賞した「タートルタクシー」や、各種メディアで紹介されて話題となった「心霊スポット巡礼ツアー」などのサービスを始めた一番の目的は、新卒の学生にタクシードライバーを志望してもらうことにあるのです。


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助手席裏のボタンを押すといつもよりゆっくり運転する「タートルタクシー」。
利用者調査では、76%の人が「ゆっくり運転してほしいと思ったことがある」と回答があった。

逆転の発想で新サービスが誕生

 学生の方に私たちのことをいかにしてアピールするかを考えていたとき、広告賞のカンヌライオンズで賞をとった企業は翌年の志望者が増えると聞きました。飛びぬけたアイデアでプロモーションができれば、お客さまだけでなく、普段タクシーに興味がなかった就活生にも目を向けてもらえるかもしれない。そう考えて議論していく中で、ボタンを押すとゆっくり走るタクシーというアイデアにたどり着きました。

 タクシーに乗るお客さまの中には、「急いでほしい」と運転手に伝えることはよくあります。ですが、タクシーを利用されるのは早く着きたい方だけではありません。助手席裏のボタンを押すといつもよりゆっくり運転する、新しいタクシーサービスがあってもいいのでは、という逆転の発想です。ゆっくり走るタクシーが本当に求められているのかを確かめるために、アンケート調査も行い、裏付けを取って進めました。

 その結果、カンヌライオンズは残念ながら受賞できませんでしたが、2014年のグッドデザイン賞で特別賞「未来づくりデザイン賞」を受賞することができ、その翌年は過去最高の志望者が集まりました。採用者は例年5〜6人だったところを、最終面接に100人近くが残り、そこから20人が採用されるという状況で、狙い通りの結果を得ることができました。

 「タートルタクシー」では採用だけではなく、新聞や雑誌、ウェブメディアに取り上げられたことで企業としてのブランディングにも大いに効果がありました。そこで新規の話題性のある企画をどんどん発信していく方針で進めています。「タートルタクシー」後の第一弾企画となったのが「心霊スポット巡礼ツアー」です。

 次回は吉川社長のアイデアから生まれたユニークな企画と、そのアイデアを実行するための工夫について、また、他社とのコラボで生まれた企画などを紹介します。


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「タートルタクシー」が話題になったことで、新卒採用にも良い影響が出た。

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