インサイトスコープ
龍角散の復活と決断第3回 ノドを守る、新ビジネスの開発
公開日:
株式会社龍角散
代表取締役社長
藤井 隆太
誰でも安心して使える「龍角散」ブランドを確立していくために、のど飴も新製品を出すことにしました。かつては、菓子メーカーに当社がハーブパウダーを提供し、菓子メーカーがハーブパウダーをまぶしたのど飴を製造、「龍角散」のブランドを使用して販売を行っていました。発売以来一定の売上を維持する人気商品でしたが、ハーブパウダーは医薬品レベルであるものの、飴の製造に当社は関わることができず、品質への保証が難しいという課題がありました。お客さまから「自社で責任を持てないものに社名を出すな」という声をいただくこともあり、当社で一貫して生産する形に変更しました。
龍角散らしさを打ち出したのど飴
誰でも安心して使える「龍角散」ブランドを確立していくために、のど飴も新製品を出すことにしました。かつては、菓子メーカーに当社がハーブパウダーを提供し、菓子メーカーがハーブパウダーをまぶしたのど飴を製造、「龍角散」のブランドを使用して販売を行っていました。発売以来一定の売上を維持する人気商品でしたが、ハーブパウダーは医薬品レベルであるものの、飴の製造に当社は関わることができず、品質への保証が難しいという課題がありました。お客さまから「自社で責任を持てないものに社名を出すな」という声をいただくこともあり、当社で一貫して生産する形に変更しました。新たに立ち上げた「龍角散ののどすっきり飴」では、3つのポイントで独自性を出しました。ひとつは医薬品ブランドを冠したのど飴であること。次に超微粒子の「龍角散」のハーブパウダーを使っていること。そして、国産ハーブであることです。ハーブパウダーの原料であるカミツレは、「龍角散」発祥の地である秋田県で生産しています。
のど飴のテレビCMでは秋田県知事の佐竹敬久さんに、秋田藩主に扮して出演してもらい、当社の歴史と秋田とのつながりを感じさせるものも制作しました。パッケージは一目で「龍角散」と分かる見た目になっています。
「龍角散ののどすっきり飴」は、発売から5年でのど飴市場のシェアでトップになり、現在は、スティックタイプのものだけで1日に10万本近く出荷するほどの規模になりました。成長を続けていくために、夏場の消費が落ちる時期への対策として、「夏のエアコンでのどが乾燥したときに」といったように使用機会を提案すると同時に、夏場に合ったフレーバーを追加しています。現在販売されているシークヮーサー味は、沖縄でのテストマーケティングを経て全国展開しました。
食事する喜びを保ちたいという想い
薬を飲みやすくする世界初の「らくらく服薬ゼリー」は、ただのゼリーとは異なります。確実に薬を包みこんで、むせずにのどや食道を通過し、胃に到達したら、ゼリーはすぐにバラバラになり、薬の作用や吸収に影響を与えないという特徴を有する特許も取得している服薬専用のゼリーです。薬は錠剤やカプセル、粉末状といった固形物が一般的ですが、人間ののどの構造は、固形物を咀嚼して飲み込まないとむせてしまいます。しかし、薬を飲むときには固形のまま飲まなくてはなりません。水と一緒に飲むわけですが、お腹がいっぱいだとたくさんの水は飲めませんし、少ない水で薬を飲むと、水だけが先に胃へ進んでしまい、薬がのどや食道に取り残されてしまいます。こうしたことは誤嚥の原因にもなっていて、介護の現場では、おかゆに薬をかけて食べさせたりしていたのです。Quality of Life(QOL)の維持としても、食事に喜びを伴うことは非常に重要です。その食事が薬を飲むという苦しみにつながっていることは医薬品メーカーとして看過できませんでした。そこで、「らくらく服薬ゼリー」の開発に至ったのです。服薬ゼリーと一緒に飲むと、水と比べてするっと飲めることを、私自身が被験者になってレントゲン透視撮影で証明しました。このときの映像は、商品化したあとテレビCMでも使用し、服薬ゼリーの良さを理解してもらうために役立ちました。服薬ゼリーは、それまで世の中になかったものなので、単純な広告で認知を獲得するには莫大な費用がかかります。この商品では、そういう方法を取らず、介護の現場で使ってもらい、良さを実感してもらい、広めていきました。実際、薬を飲んでもらえる、食事もとれ元気になったという反響ももらいました。こうした活動は、売上に直結しなくても企業のブランドイメージを高めることにもつながるので、意義があると考えています。
介護用からスタートし、子ども向けにも「おくすり飲めたね」を展開しています。子どもの舌は刺激に敏感なため、薬の苦味をマスキングして飲みやすくする機能を服薬ゼリーに加えています。こちらは、インフルエンザのときに服用する薬の強い苦味に課題を抱えていた製薬会社と協力し、全国の小児科に置いてもらったことで認知を高めました。最近は、複数の薬を一度に飲むときにも服薬ゼリーが有効だというテレビCMも展開しました。これは、あえて一般的に新商品が少ない8月に放送しましたが、薬は年中飲むものということもあり、認知度向上につながりました。また、「おくすり飲めたね」が世に出た頃、子どもに薬を飲ませていた親世代が、「らくらく服薬ゼリー」を使う世代になってきているので、そうした世代を意識したテレビCMも放送しています。
会社存続の危機を救ったのは、長く「龍角散」を愛用してきた消費者の声でした。「龍角散」ののどを守るという使命は、「龍角散ののどすっきり飴」「らくらく服薬ゼリー」といった当社の新たな商品にも通じるものです。これからも、医薬品企業としての責任や社会貢献を意識した企業活動を進めていきたいと考えています。
のどに詰まらない粒の大きさと粘度、固さを計算して作られている。
水に比べて胃までスムーズに届くことがわかる。CMにも使用した。