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これからの時代の企業マーケター第1回 “マーケター≒寿司職人”の時代へ
公開日:
ヤマサ醤油
営業本部マーケティング部 副部長職 家庭用MD推進室長
ヤマサ醤油で家庭用商品の店頭販促及びネットコミュニケーションを担当する藤村功と申します。これから3回、よろしくお願いいたします。
ヤマサ醤油で家庭用商品の店頭販促及びネットコミュニケーションを担当する藤村功と申します。これから3回、よろしくお願いいたします。
藤村 功
寿司職人はただの料理係ではない
購買行動に至る消費者の判断基準は多様化していると言われます。価格や質の良さといった軸のみならず、エコやソーシャル、企業イメージなどさまざまなフックがあり、消費者が価値を置くポイントもさまざまです。そんな時代に、企業のマーケターが留意すべきことは? というテーマをいただき、今まで自分が係わったことから、少し感じていることをご紹介したいと思います。まず、私が掲げた題名中にある「寿司職人」ですが、これはクロネコヤマトさんの宅急便ビジネスのヒントになったと言われている逸話から引用しました(※1)。
・・・宅急便の“発明者”である小倉昌男はかつて、セールスドライバーをお寿司屋さんの寿司職人に例えました。寿司職人はただの料理係ではありません。お客様と向かい合い、注文をとり、サービスをし、談笑を交え、決済まで行う。セールスドライバーも同様です。だからこそ、宅急便はきめ細かなサービスを付加できるユニークな商品となったのです。・・・
私は企業マーケターのあるべき姿も、ここに書かれているような寿司職人が求められていると感じています。その製品に関係するマーケティング活動について一気通貫して同じマーケターが担当するイメージです。もちろんチームでもいいんですが、メンバー各自の持ち味は違っていても一枚岩のマーケティングチーム、要は縦割りで自分の担当以外知らない、やらないというチームはダメです。
価格競争に打ち勝つエンジェル化戦略
さて、その理由ですが、一言で言えば価格競争に耐えうるマーケティングの追求です。日本はデフレの時代になって久しいと言われており、野村アセットマネジメント社のHPによると、90年代半ばから、ずっとデフレは続いており、その主な理由の中にグローバル化によるデフレ、人口減少によるデフレが挙げられています(※2)。
この2つは、2005年に刊行されたビジネス書「ブルー・オーシャン戦略」(※3)に記されている、競争の激しい既存市場の「レッド・オーシャン(赤い海、血で血を洗う、特に低価格競争の激しい領域)」化の原因のような気がしており、この傾向は今後も続いていくと考えられます。
当然そこに書かれているように、企業マーケターは、ブルー・オーシャンを目指した商品展開、市場創造を狙っていきたいわけですが、そんなに簡単にブルー・オーシャンがあるわけではありません。ですから、ブルー・オーシャンを目指しながら、かつ、ブルー・オーシャンに行く前にまずやれることを考えてやっていく必要があるのではないでしょうか?
私はそこをソーシャルマーケティングに求めています。弊社のソーシャルマーケティングによる顧客戦略は、一緒にチームを構成している(株)ワールド・カフェの笠原 造社長が顧客ロイヤリティ理論「NPS」(※4)を基に提唱しているエンジェル化戦略です(図1)。
それはお客様に何度も自社製品を買っていただき、そして自社製品のファンになっていただき、さらにお友達に対してもその製品の良さを推奨してくださるお客様(エンジェル)を増やす戦略です。
特に何度も買って下さるリピーターになっていただくことはとても重要です。価格競争の中では一度きりのお買い上げで終わってしまった場合、トライアルに要したマーケティングコストの回収はままならないからです。ではいかにしてエンジェルになっていただくか、それは企業とお客様との対話、つまり企業マーケターとお客様との対話しかないと思っています。ここでようやく、「ただの料理係ではなく、お客様と向かい合い、注文をとり、サービスをし、談笑を交える寿司職人さん」とつながってまいりました。
以下、次回に続く。
(※1)日経ビジネスオンライン 物流で日本と世界の未来を創るヤマトグループの現在、歴史、そして明日
http://special.nikkeibp.co.jp/ts/article/aa0f/109427/page02.htm
(※2)インデックスファンド投資のための経済教室 インフレとデフレ
http://indexfund.nomura-am.co.jp/viewpoint/school/03/03.html
(※3)ブルー・オーシャン戦略――競争のない世界を創造する(Harvard business school press)
http://amzn.to/182PtLi
(※4)顧客ロイヤルティを知る「究極の質問」(Harvardbusiness school press)
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