グローバルコラム
シリーズ ヨーロッパを知る (5)Brexitでイギリスでの食生活は変化するか?
公開日:
Cross Marketing Group Inc. Global HQ
Global Sale Manager
益並 香奈
シリーズ『ヨーロッパを知る』第5回目となる今回は、世界的にも注目されている「Brexit(※1)」に焦点を当てていきます。
(※1)EU離脱のこと
Brexitで変わる生活スタイル
2016年6月にイギリスの国民投票でEU離脱が決定して以降、英国拠点の企業はどうなるか、政府はどのようなガイドラインを出してくるのかなど、さまざまな報道がされています。企業移転や移民対策指針の変更が、実際にイギリスに住む一般市民にどのように影響が及んでくるのでしょうか。本コラムでは少し目線を変え、影響が及ぶかもしれない食生活にクローズアップし、考察します。
EU離脱までのタイムラインとイギリス労働VISA要件の変更
まずはイギリスのEU離脱までのスケジュールと、最近の動向についてふれたいと思います。2017年3月にEU離脱通知が行われてから、2年間の離脱交渉が始まりました。民間レベルでも、法律事務所や調査機関などによるEU離脱に関するセミナーが開催されることが増え始めています。一部には、Brexitに関しては待って得することはない、と自社で影響範囲の調査を行う企業も出始めています。
しかし、イギリス政府からは具体的なガイドラインが示されていないため、人・モノの移動の自由についてどう変わっていくのかか、確実なことは依然不明確なままです。私も現地企業やイギリスに拠点を置く日系企業の方にヒアリングをする機会がありますが、6月のイギリス総選挙までは静観する企業が大半を占めている印象です。
VISAの取得基準が厳しくなるのは日本以外の国も例外ではないでしょう。これらの施策を通じて、移民が入国しづらい国づくりが行われると、現在イギリスで働く外国籍の人々は、他の国へ行くか、帰国が求められることになってくるのではないでしょうか。
(※2)VISAのスポンサー側に課せられる税金で、集められた資金はUK内の労働者のスキルアップを目的に使用される
本格的な外国料理は旅行でないと食べられなくなる!?
では、ここからは本題の、イギリスに住む一般生活者への食に対する影響について考察したいと思います。イギリスに住む1042人を対象に、外食実態を把握するためアンケートを行いました。このアンケート結果からは、外食頻度の高い人ほど、日本食レストランへ行ったことがある、との回答率が高いことがわかります。また、外食頻度の高い人は、日本食以外の海外料理レストランにも良く行っていることがわかりました。外食をよく行う人は、食に対してアグレッシブであるともいえるのではないでしょうか。
イギリスの人口は約6,460万人(2014年、出所:英国国民統計局)。その内移民が13%を占めており、国民の6人に1人が移民だということになります。特にロンドンは移民率が高く、英国以外の料理を提供するレストランは街中で見かけます。今日は日本食、明日はインド料理、週末はタイ料理をデリバリー・・・など、簡単にいろんな国の料理を楽しむことができます。
しかし、Brexitの影響で労働VISAが取り難くなると、こういったレストランの経営者や従業員にも影響が及び、閉店を余儀なくされるお店も出てくるのではないでしょうか。イギリスに住む一般生活者からすると、いつも通っていたレストランに行けなくなった、本格的な外国料理が食べられるレストランが最近無くなってきた・・・というような事になってしまうかもしれません。
中食(※3)はどうなる!?
今回のアンケートでは、自炊についても確認しています。素材から調理をすることは理想であるか?という問いに対して、「とてもそう思う」と回答した人が47.3%いました。「ややそう思う」という人を含めると、8割にもなります。イギリスの小売店では、日本よりレディーミール(調理済み料理)が充実しているように感じていましたが、生活者の意識としては、素材からきちんと調理することを理想と考えているようです。(※3)調理済みの食品を自宅で食べること
そうすると、料理教室やレシピ情報などの需要が高まるかもしれません。ネガティブな影響もありますが、そこは逆にチャンスと捉えることもできますね。
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