グローバルコラム

シリーズ ヨーロッパを知る (2)イギリスのご飯って本当にまずい!? 気になる食と健康についての現地報告

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益並 香奈

 シリーズ『ヨーロッパを知る』第2回目の今回は「イギリスの“食”事情」に焦点を当てていきます。

意外な肥満大国イギリス

 イギリスといえば、「ご飯がまずい」という印象をお持ちの方も少なくないと思います。まずい食べ物ばかりなら、あまり食べ過ぎることもないかと思うのですが、「Health Survey for England (HSE)」の発表によると、実は人口の半分以上の成人が肥満傾向(BMI25%以上)または、肥満(BMI30%以上)であるという意外な結果が出ています。


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※BMIが30kg/m2以上を肥満と定義し、各年の肥満率の3年間での平均の値を示している
*Adult (aged 16+) obesity: BMI ≥ 30kg/m2. Three year average of published prevalence figures.
(出典) Health Survey for England 1993-2014 (3-year average) / University College London

 この肥満トレンドは子どもたちも例外ではなく、OECD(経済協力開発機構)の調査によると、11~15歳の子どもの3人に1人が肥満傾向または肥満にあるとされ、糖尿病のリスクなどがかなり高くなっている現状です。このままでは2050年には子どもを含めた人口の半分が肥満傾向または、肥満になってしまうという指標があることから、イギリス政府も糖分の多い清涼飲料への課税など、様々な方法を模索しています。

調理時間を掛けない!? イギリスの料理事情

 では、なぜ一般的に「ご飯がまずい」と言われるのかを考えてみました。
 イギリスに来てまず驚いたのは、冷凍食品とレディーミール(オーブンやレンジで温めるだけの食品)の種類の多さです。スーパーの店舗数も日本に比べるとかなり多く、どのスーパーでもレディーミールの種類は豊富に取り揃えられています。お寿司やお菓子の冷凍食品といったものまで存在するほどです。
 また、「店舗面積の3/4が冷凍食品」という冷凍食品をメインに取り扱うスーパーもあり、イギリス国内で850店を超える店舗展開を行っています。また、家族全員分の夜ご飯をレディーミールで賄って、そのような食事が毎日続く…ということも多いため、まとめて買ったらお得という売り方がどのスーパーでも頻繁に行われています。昼ごはんはサンドウィッチに野菜チップス、そしてジュースを買い、会社帰りには冷凍食品やレディーミールとサラダ(レタス系の葉っぱを袋詰めしたもの)やカットフルーツを購入するというのが、スーパーでよく見られる光景です。
 このようにイギリスでは、冷凍食品やレディーミールが多用されているため、「家庭の味」といったものがなく、仮に自分で手を加えるとしてもソースの追加やトッピングを少し加える程度の調理に留まるので、料理スキルを向上させる機会が少ないことが「ご飯のまずさ」をもたらす理由のひとつなのではないでしょうか。 


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イギリスではどんな国の料理も楽しめる!?

 イギリス人は肥満がいっぱいで冷凍食品やレディーミールを良く食べると紹介しましたが、決してそのような食事だけで全員が満足しているわけではありません。街には様々な国の料理を楽しめるレストランが数多くあります。日本食はもちろんのこと、中国、韓国、ベトナム、タイ、インドといったアジア料理、フランス、イタリア、スイス、スペイン、ハンガリー、ポーランドなどのヨーロッパの料理、その他にもブラジルやメキシコ、トルコなど、各国のレストランがところ狭しと並んでいます。
 イギリスの人口は約6,460万人(2014年、出所:英国国民統計局)。そのうち移民は13%と「国民の6人に1人が移民」ということもあり、様々な国の料理を食べることが出来るのです。彼ら彼女らからファッション、食文化などの刺激を受けて異文化が混じり、そこから新しい文化や健康意識が生まれ、結果としてグルメな人も次第に増えていっています。
 私がいる社内を見ても、イギリスの企業ではあるものの、ポーランド人、スウェーデン人、フランス人、台湾人、ナイジェリア人など人種や国籍は多岐にわたり、社内の冷蔵庫には様々な食材が保管されています。また、美味しいレストランを見つけたら何日も前から予約して行こうという話にもなります。


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健康意識も上昇中↑↑ 「日本=健康」!?

 私が住むロンドンでは健康への意識が高い人も多く、朝の6時から公園で走る人をよく見かけます。会社に行く前にジムに行ったり、通勤を自転車で行ったりする人なども多くいて、自転車置き場やシャワールーム、着替え室が設備されているオフィスが多くあります。


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 そんな中、食べ物でも健康を取り入れようとする人も多くいます。ファーマーズマーケットに行くと、フルーツたっぷりのジュースに行列ができていたり、日本でも流行っているコールドプレスジュースのお店をよく見かけたりします。


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 そしてなによりも、イギリスでは「日本=健康」というイメージが強いようで、日本人が健康のために野菜中心の生活に変えたり塩分を控えたりするような感覚で、イギリスでは健康のために日本食を食べるようにするようです。お寿司やカレー、うどんなど、ダイエット中には禁物だと思われている食べ物も、こちらでは健康になると思って食べている人が多くいます。

日本ブームはとまらない!日系企業進出のチャンス

 チェーン展開している日本食レストランには、日本人ではなくアジア系の外国人が経営していることが多く、味も日本とは全く異なるものが未だにたくさんあります。しかしながらグルメな人が増えている影響もあり、日本人が食べても美味しいと思う日本食レストランでは予約がないと入れないという程の人気を呼んでいます。また、欧州は陸続きなので、イギリス以外の国からも美味しい日本食を求めてはるばるやってくる方もいると聞きます。


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 このように本格的な料理を知った人が増えることで、冷凍食品やレディーミールでも本格的な日本料理を食べたいという消費者は一定量出てくるのではないでしょうか。また、イギリスのEU離脱によって、EUの中で規定されていた食材や調味料などの制限から解放されると、今以上に様々な食や価値観が入り込み、全く新しいトレンドが生まれるのではないかと思います。日本ではイギリスのEU離脱についてはネガティブな情報が多く出ましたが、逆に日本の企業からするとチャンスになる可能性も増えるのではないでしょうか。イギリス政府としても健康に対しての取り組みを前向きに行っていることから、今後イギリス国内の健康意識はさらに高まっていきそうです。

出典:
・PHE (Public Health England), “Severe Obesity”
 http://www.noo.org.uk/NOO_about_obesity/severe_obesity
・OECD, “Overweight and obesity among children,” Health at a Glance 2015
 http://dx.doi.org/10.1787/health_glance-2015-20-en

<会社概要>
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10 Valentine Place , London SE1 8QH The United Kingdom
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http://www.cm-group.co.jp/

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