グローバルコラム

シリーズ ヨーロッパを知る (1)ヨーロッパ最大の家電見本市「IFA2016」から見えてくる家電の未来予想図とは!?

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Global Sale Manager

益並 香奈

 新シリーズ『ヨーロッパを知る』では、現在ロンドンに駐在している筆者が、ヨーロッパにおける最新のトレンドをご紹介するとともに、リサーチャー目線でのマーケティング事情の“今”を切り取った新鮮な情報を日本の皆様に向けてお送りしていきたいと思います。

欧州最大級の家電見本市「IFA」

 シリーズ第1回となる今回は、ドイツ・ベルリンで2016年9月2~7日(現地時間)の日程にて開催された欧州最大級の家電見本市「IFA2016」(国際コンシューマ・エレクトロニクスショー)についてのレポートをお送りします。
 今回のショーでは、世界各国の有名メーカー(1,645社)が一同に集結し、今後、ヨーロッパでトレンドとなる可能性のある家電製品を発表しました。その中で多く見られた未来トレンドについて紹介します。

最新トレンド1:家電と生活をつなげる「Home connect」

 ショー全体では、冷蔵庫や洗濯機などの家電製品をスマートフォンやタブレットと連携させることで、遠隔での操作を実現する技術を搭載した製品が数多く発表されました。
 例えば、洗濯機では、外出先から洗濯設定をして、自宅に帰る頃には洗濯が仕上がっているという生活を提案。家電が人の行動に合わせていくようなスタイルが紹介されていました。
 このように家電にネットワーク機能を加えることで、家電と生活とをつなげる「Home connect」が第一のトレンドとして挙げられます。


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最新トレンド2:楽しみながら家電を使える「エンターテインメント性」

 家電に面白さを出した発表で注目を浴びていたのが現地ドイツのBOSCH社が発表したキッチンのパーソナルアシスタント「Mykie」です。
 Mykieに話しかけることでMykieがユーザーの考えを分析して献立を考案。インプットされた冷蔵庫の中身から買い足しが必要なものをリスト化したり、料理のレシピを壁に映しだして調理の際のレンジやオーブンの時間や温度の調整を自動で行ったりしてくれる機能を備えています。可愛いらしい外見ながら、まるで料理のプロがユーザーのそばでサポートしてくれるような環境が実現します。Mykieは表情の種類も多数取り入れていることから、ユーザーが話かける楽しみについても提案が行われていました。


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 各社から冷蔵庫の外観パネルに庫内の食材管理情報の表示や、スマートフォンのように音楽やインターネットを楽しめる機能が多数発表されている中で、韓国・サムスン電子は冷蔵庫の外観パネルを利用して、家族とのコミュニケーションを取れることを特徴とした製品を発表していました。
 画面にメモを残して情報を共有したり、家族の写真を映し出したりと、食材を保管し取り出すという機能以外の役割を持たせることで、キッチン以外の場所に置くという使い方も考えられるかもしれません。


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 このように、単に「家事のために使うだけの家電」から、「エンターテインメント性を加えた、使って楽しめる家電」へと進化を遂げているということが第二のトレンドとして挙げられます。

商材ごとにみる各社の特徴をご紹介!

◆特徴的な形状のディスプレイ
 韓国・LGエレクトロニクスと韓国・サムスン電子の両社がそれぞれ大きく展示していたのは、特徴的な形状をしたディスプレイでした。


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 韓国・LGエレクトロニクスは薄さを強調したディスプレイを展示。大画面でありながら、圧迫感を感じさせない見た目が特徴的でした。現在、欧州ではこのような超薄型のディスプレイを搭載したテレビは高価格帯のハイエンドモデルとして販売されていることから、まだ普及には至っていないものの、今後価格の見直しが行われると一気に市場に広まる可能性が高いと思われます。

 一方、サムスン電子は湾曲ディスプレイを多く展示。スクリーンに湾曲を持たせることで、映像をより美しく映画館のように映画等を楽しむことが出来ます。こちらも高価格帯のハイエンドモデルになるため、あまり自宅で見かけることはありませんが、NetflixやGYAOなどの映画を楽しめるアプリケーションの普及に伴い、テレビにインターネットを接続させ、映画を楽しむ人が増えることを考えると、今後需要は増加していくのかもしれません。
 このようにディスプレイ部分が曲面になっている製品は以前からあるものの、今回のIFAでも新製品が発表されていることから、今後も継続して開発が進められていくと思われます。

◆お鍋がいらない未来のキッチン


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 日本のメーカーからはパナソニックが行っていた未来型キッチンの提案をご紹介します。IH調理器がテーブルに備え付けられ、食材をお皿に入れたままIH調理器の上に置くと、食材だけを感知して加熱出来るというものです。近い将来、なにかと収納スペースを取りがちなフライパンや鍋が全くないキッチンが出現するかもしれません。

◆バリエーション豊かな冷蔵庫


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 外観のデザインで特徴的だったのは、スイス・LIEBHERR社の冷蔵庫です。豊富なカラーバリエーションやワインセラーが組み込まれた製品など、個人の趣味趣向に合わせた商品展開が見られました。

◆各社のアイディアが光る洗濯機


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 韓国・サムスン電子は「Add Wash」と呼ばれる独自の機能をアピール。これは、一旦洗濯をスタートすると途中で洗濯物を追加することができないというドラム式洗濯機の欠点に対し、小さな窓を設けることで、洗濯途中でも洗濯物を追加できるという機能です。ブースでは、この機能を全洗濯機に搭載して展示されていました。


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 また、中国・ハイアールは洗濯機をクローゼットの中に設置することで、洗濯乾燥機で乾燥までを終えた衣類を移動させることなくそのまま収納できるプロセスを提案。洗濯と収納との生活空間を繋ぐ工夫が行われていました。


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 一方、欧州では老舗のドイツ・ミーレは、洗濯機を購入する際に重視される「頑丈さ」について様々な方法を用いてアピールしていました。欧州では「洗濯機は故障する」という意識が強いため、傷のつきにくさやステンレスを使った頑丈さなど、まさしく現地のニーズに合わせた商品特徴となっています。そのため、日本のように「フワッと仕上がる」といったようなアピールでの展示はあまり見られませんでした。

IFA2016を振り返って

 IFA2016を振り返ると、家庭内外のネットワークとつながるスマート家電がかなり広まっている印象が大きい中で、コネクトさせる情報や内容、その方法などで各社の独自性や違いが提案としてより鮮明に現れていました。
 今回はあくまでもメーカーが打ち出す未来型の生活イメージとなるため、どこまで消費者がこのような生活スタイルを求めていて、それを付加価値と考えて投資するのかという見極めが今後技術開発を進める上での重要課題となっていくと考えられます。

 私がロンドンに住むことになって、会社の同僚や現地の友人などに家電の購入方法について聞いてみたところ、家電量販店での購入よりも、むしろ大型スーパーやホームセンターの一角にある家電コーナーや下記のようなインターネットのお店での購入を勧められました。

・curreys
http://www.priceinspector.co.uk/curreys/

・Amazon UK
https://www.amazon.co.uk/

・Argos
http://www.argos.co.uk/


 高級な家電については百貨店に入っている家電コーナーで保障をつけてもらって購入するということはあるようですが、日本のようにショールーミング(小売店で商品の実物を見て、その商品をネット通販サイトで購入する行為)をそこまでしているという印象はなく、ネット上に記載されている口コミ情報や利用者が評価したランクを表す星の数がインターネットで購入する際の重要な購入情報源になっているようです。このような状況の中で、未来型の家電の使用イメージをどう消費者がイメージするかということが今後の注目ポイントになるのではないでしょうか。

<会社概要>
Cross Marketing Group Inc.
10 Valentine Place , London SE1 8QH The United Kingdom
+44(0)7712 358 284
http://www.cm-group.co.jp/

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