グローバルコラム
マレーシアの首都・クアラルンプール(KL)の自動車市場
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マレーシアの移動手段は、そのほとんどが車とバイクです。ここ数年間、鉄道やバス等の公共交通手段は著しい発展をみせていますが、まだまだ一部に留まっており、マレーシアでの生活には車やバイクが必要不可欠。今でもバイクは大切な交通手段の一つですが、一家に一台は車を持つのが当たり前になりつつあります。
マレーシアは車社会
「東南アジア」と聞いて思い浮かぶ、バイクを道路が埋め尽くすという光景は、マレーシアにはありません。近年着々と整備されている広い道路を埋め尽くしているのは、おびただしい数の車です。2010年、マレーシアの自動車市場が初めて60万台に到達して以降、最近の人口増加に伴い、自家用車を保有する家庭は著しく増え続けています。目まぐるしく成長するマレーシアの自動車市場は、今後どのような動きを見せるのでしょうか。
広い道路に溢れる自動車
街に溢れる年代車と故障車
市内を走る車に注目してみると、とんでもなく古い車が数多くある事に気がつきます。日本では懐かしい旧型のトヨタ・カローラや、ホンダ・アコード、10年程前に製造された日産・サニー等もこちらではバリバリの現役!ハイスピードでバンバン走っています。更に驚かされるのが故障車の数! テールランプやサイドミラーの欠落は当たり前。ドアやトランクがパカパカしている車、錆だらけの車、バンパーが閉まらずゴムで縛っている車等々・・・目を背ける程のダメージを晒しながら、平気で走っている車の多い事!高速道路では、側道に故障車を停めレッカー車の到着を待つ光景を見ない日はありません。
実は、マレーシアでは乗用車に対する車検の義務がありません。(商用車は車検の義務があります。)そのため、人々はローンを組んで購入した高価な車を、20年~30年は乗り続けます。その上運転マナーは最悪ですから、割り込みや急な方向転換による追突・衝突は日常茶飯事です。
車検の義務がないのですから、故障修理もメンテナンスも自己手配です。そして走れるうちは、故障していようが見た目がひどかろうが、古い車を何十年でも走らせます。
故障車も年代車もまだまだ現役です
マレーシアの中古車市場
年代車が多く見られるマレーシアは、中古車市場が大変活発。帰国時に高値で売れることから、マレーシアで富裕層の位置づけとされるマレーシア・マイ・セカンド・ホーム(MM2H)制度の利用者や駐在員などは、知人から譲り受けたり新車を購入したりして、迷う事なく自家用車を獲得します。そして長期滞在後は売却して帰国するのです。このサイクルにより、新車購入の増加がマレーシア国民の中古車保有率の上昇を助け、街中には更に古い車が溢れることになります。
長い間乗られている日本車
外国車(日本車含む)のトレンド
年代物の車や故障車が目立つマレーシアですが、近年の、特に首都KLでは、また違った光景を目にします。シビック、シティ(HONDA)や、ヴィオス、プリウス(TOYOTA)など、日本車、しかも比較的新しい車を沢山見かけるのです。国内シェアをみてみると、Produa,Proton社合計で58.1%(2013年マレーシア自動車協会(MAA)発表)と国産車シェアが輸入車シェアを若干上回っているわけですが、都心部では、先述の日本車メーカーやBMV、ベンツやポルシェ、ランボルギーニに至るまで、外国車を目にする方が多いと感じます。
輸入車が多く停車するKL市内の駐車場
それにしても驚くべきは、外国車の購入金額です。日本車をはじめとする輸入車は関税が15%(2013年度)かかる上、輸送費なども加わるために購入価格は日本の価格の2~3倍もの値段になります。
マレーシア政府の狙いと今後の動き
2013年度は、自動車販売の中でもハイブリッド車の成長が著しく、人気の高さを示しました。ハイブリッド車の完成車輸入に対し、物品税・輸入税を免除する措置が取られていたからです。さらに、2014年1月20日にマレーシア交際貿易産業省が国家自動政策を発表しました。これは、マレーシアがエコカー生産の拠点となるための目標が示されたもので、各種の支援措置も用意されました。これらの動きは、マレーシアが今後自動車産業の活性化に重点を置く事を顕著に表しています。現時点では、先述の免税優遇措置が2014年12月末で終了する予定ですが、政府は今後エコカーに対する物品税を減税する可能性があるとしており、さらに新たに車検の導入も検討しています。
車検の導入が決まれば、状態の悪い中古車からの買い替えを余儀なくされる国民が相当数増えると予想されます。どうせ買い替えるなら、購入時は高価であっても長期間走れて故障の少ない、性能の良い日本製にますます期待が寄せられているように感じます。
今後ますますの発展を見せるマレーシアの超車社会。複雑化する道路事情の発展や政府の措置による駆け込み需要、環境問題とも絡み合い、今後の自動車産業は大きく変化していくのかもしれません。
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