グローバルコラム
2023年を日本と中国の流行語で振り返る
公開日:
株式会社gr.a.m
代表取締役
谷村 真
2024年第1弾のグローバルコラムは、今年も2023年の流行語についてご紹介します。2023年は世界的に大きな出来事が起こり、新たな時代への変化を目の当たりにする年となりました。その中で、世相を反映した言葉はどのようなものが流行ったのか、日本と中国の流行語を比較することでその時代を追ってみます。
日本の2023年流行語
毎年、ユーキャンが「現代用語の基礎知識」として実施している「新語・流行語大賞」をもとに、そこで選出された流行語トップ10から、2023年の日本における流行語を見てみましょう。アレ(A.R.E)
プロ野球の阪神タイガース 岡田彰布監督が優勝を「アレ」と表現したことが話題になりました。2005年以来18年ぶりにリーグ優勝を果たした時点で「アレ」は解禁され、全国的に盛り上がりをみせました。また、目標(Aim)、敬う気持ち(Respect)、パワーアップ(Empower)という3つの意味が込められているそうです。
蛙化現象
「蛙化現象」とは、恋愛感情や好意を抱いている相手のささいな言動が気になり、気持ちが急速に冷めてしまうという意味で使われています。本来は、好意を持つ相手が自分に好意を持っていることが分かると生理的な嫌悪感を抱いてしまう現象を指します。新しい学校のリーダーズ/首振りダンス
首を左右に動かす首振りダンスがTikTokで話題となったダンスボーカルユニット。ユニット名がTOP10内に選出されることは過去にはあまりみれらず、流行語選出の概念も変化していくタイミングなのかもしれません。OSO18/アーバンベア
人里に出没するクマのこと。「OSO18」は、北海道の標茶町オソツベツ地区で目撃されたクマの前足幅が18センチだったことから名付けられました。2023年は近年まれにみるクマ出没情報が集まり、その被害も深刻な状況でした。理由は様々あるとされていますが、冬眠のために必要な食糧が山中で採れなくなったことも原因の一つと言われています。乳牛を襲い続けたOSO18は神出鬼没の忍者熊として世間を騒がせました。
生成AI
画像・テキスト・動画など多様なコンテンツを作成できる人工知能。情報の特定や構造化だけでなくAI自らがコンテンツを生成していくことが従来のAIとの違いで、もはや欠かせないものとなってきています。地球沸騰化
2023年7月の世界平均気温が16.95度と過去最高気温だったことを受けて、国連のアントニオ・グテーレス事務総長が地球温暖化を上回る言葉として「地球は沸騰化の時代が到来した」と発言しました。ペッパーミル・パフォーマンス
2023年WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)でラーズ・ヌートバー選手が見せたパフォーマンス。侍ジャパン内でも定着し、ヒットやホームランを打った際に多くの選手がパフォーマンスした結果、話題になりました。このパフォーマンスには「小さなことからコツコツと継続して行えばよい結果が生まれる」といった気持ちが込められてます。観る将
「観る将」とは、観る将棋ファンを略した言葉。様々な動画で将棋を見る機会が増えたことで、棋士の容姿、対局時の休憩・食事の様子など、将棋の対局を観戦するだけでなく、今までと違った見方をするファンも増え、将棋の楽しみ方も多様化してきました。闇バイト
短期・高額報酬の代わりに、強盗や詐欺などの犯罪行為に加担させるバイトのこと。SNSの普及によって、より身近に、より手軽に募集することが可能になったからか、若者の間で闇バイトが急増し、多くの犯罪がメディアでも取り上げられ話題になりました。4年ぶり/声出し応援
長かったコロナ禍による自粛・制限が緩和され、声出し応援がようやく復活しました。WBC、プロ野球、サッカー、高校野球と軒並みスポーツ観戦では声援が飛び交い、選手を後押し。特に象徴的だったのが、男子バスケットボール日本代表がこの大きな声援を背景に48年ぶりに自力オリンピックの出場を決めました。参照:2023ユーキャン新語・流行語大賞 https://www.jiyu.co.jp/singo/
2023年は昨年までの「コロナ」を中心とした世相から変化がみられた印象です。ただ選出された流行語からはこの先の明るい未来と不安が相まって、混沌とした世相を表していると感じます。大賞に「アレ(A.R.E)」が選ばれ、関西人の私としては本当にうれしい年となりましたが、2023年の代表する言葉としてスポーツ、政治、戦争、健康など幅広いジャンルから取り上げられており、多様な社会を感じさせる流行語となりました。
中国の2023年流行語
さて、ここからは中国における2023年の流行語を見ていきましょう。今年は2023年12月に中国の語言文学雑誌「咬文嚼字」より発表された流行語をお届けします。新质生产力(xīn zhì shēngchǎnlì)
「新质生产力(新たな質の生産力)」は、習近平総書記が発言した言葉。「質よりも量」を重視した過去の大量消費の時代や、中国製品サービスの「安かろう悪かろう」といったイメージを持つ時代から、デジタル時代に移行したことでテクノロジーやイノベーションを駆使して、より質の高い発展に必要な生産力という意味があります。双向奔赴 (shuāngxiàng bēnfù)
「双向奔赴(互いに歩み寄る)」とは、もともとは関係する人々が共通の目標に対してお互いに歩み寄ることを意味していました。近年は人と人が歩み寄るといった考え方だけでなく、二つの物事や国同士という意味まで拡大して用いられるようになりました。人工智能大模型(réngōng zhìnéng dà móxíng)
「人工智能大模型(大規模AIモデル)」は、膨大なデータを処理し、言語、動画、画像など複雑な用途へ応用できる機械学習モデルのこと。2023年はOpen AIのChatGPTなど多くの生成AIが話題となり、我々の社会に多大な影響を与えました。一方で関連法規などの課題も残っています。村超(村サッカーリーグ)
「村超(村サッカーリーグ)」とは、全国区で開催されるサッカーリーグとは違い、村単位で行われる地域リーグのこと。村サッカーリーグが開催されてから、中国では観客数・インターネットによる視聴者数のどちらも最高数値を更新し続けています。サッカーだけでなく、バスケットボールやバレーボールなども同様に村単位での開催が続き、2023年は一大ブームとなりました。この村経済の振興をきっかけとして、小康社会(ややゆとりある生活)を目指す中国の指針に対して大きく貢献しました。
特种兵式旅游(tèzhǒngbīng shì lǚyóu)
「特种兵式旅游(特殊部隊式旅行)」とは、まるで特殊任務を遂行する部隊のように、時間や費用をかけずに、より多くの観光地を巡る旅行スタイルを表現したもの。この「特殊部隊式」といったワードは旅行だけでなく、「特种兵式○○(特殊部隊式○○)」というように様々なシーンに派生して使用されました。显眼包(xiǎnyǎnbāo)
「显眼包(目立つ存在)」とは、外見や性格から注目を集める人のことを指します。もともとは「目立ちたがり屋」などという意味で決して良い意味で使われませんでしたが、現在では、「明るい」「かわいい」「面白い」といった良い気分にさせてくれる人に対して使うことが多く、ポジティブな意味で活用されています。特にネットでは、人だけでなく、文化財にまで使用するケースも目立ちます。搭子(dā zi)
「搭子(○○友)」とは、もともと方言だった「搭档(仲間)」を由来とし、トランプゲームをする仲間を指していました。近年、その使用範囲が広がって「何かを一緒にする仲間」を指すようになり、特にSNSでは特定の範囲の中で交流する「割り切った、ストレスのない関係」という意味で使われています。
多巴胺~(duōbāàn~)
「多巴胺(ドーパミン)」とは、脳内細胞や副腎細胞で合成される神経伝達物質で、様々な感覚に影響を与え、健康や幸福感に大きく関与しています。中国では、色鮮やかな色合いという意味で、楽しい気分や幸福感を与えてくれる対象を形容して使われています。例えば、「ドーパミンレストラン」や「ドーパミン仲間」などといった使い方がされています。情绪价值(qíngxù jiàzhí)
「情绪价值(感情的価値)」は、人間関係において他者に与える感情的影響や能力を指して使われています。他者の気持ちを安定させたり、楽しませたり、快適にさせることができる人ほど、能力が高く、感情的価値も高いとされています。质疑~、理解~、成为~(zhìyí~、 lǐjiě~、chéngwéi~)
「质疑(○○に疑問を持ち)~、理解(○○に理解を示し)~、成为(○○になる)~」とは、人気ドラマ「愛情公寓(iPartment)」に登場するヒロインの林宛瑜の行動に対して、疑問を持ち、理解し、共感したことを指します。2023年初め、「宛瑜に疑問を持ち、宛瑜を理解し、宛瑜になる」というフレーズがソーシャルメディアで話題を集めたことで流行したフレーズです。人生においても、相手に疑問を持ち、理解し、自身もそのような形を目指すことはよくあることであり、誰もが必要なステップであることを意味しています。
参照:
咬文嚼字
人民日報日本語版 http://j.people.com.cn/n3/2023/1207/c206603-20107091.html#:~:text=今年は、「新質生産,○○、成為○○
まとめ
このように流行語を見てみると選出される言葉は国によって大きく違います。年末年始のタイミングで一年を総括するイベントを追いかけることで、対象国における世相を垣間見みることができ、また自国と比較してみることで面白い気づきや違いを感じることができるのではないでしょうか。
2023年日本では混沌とした社会における不安と期待、中国では特にSNSにおける人的関係や感情が選出されていることから、一色に見えていた中国国民の願いや希望、成熟しつつある社会を垣間見たような気がします。
今年もこのような小ネタでぜひチームのメンバーとコミュニケーションを弾ませて明るく新年を始めていただけますと幸いです。今年もよろしくお願いいたします。
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