グローバルコラム
世界に挑む中国のゲームチェンジャーたちの取り組み事例を紹介
公開日:
株式会社gr.a.m
代表取締役
谷村 真
中国は近年、世界経済において大きな存在感を示してきました。特にハイテク産業においては、中国企業が世界のリーダー的な地位を獲得しつつあります。これは中国が世界経済において「ゲームチェンジャー」の役割を果たす可能性を示していると言えるでしょう。そこで今回は、現在中国で「ゲームチェンジャー」の役割を果たす可能性を持つ企業のサービスをいくつかご紹介したいと思います。
中国におけるハイテク産業の現状
中国がハイテク産業において強みを確立した背景にはいくつかの要因があげられます。まず中国は世界最大の人口を抱えるため巨大な内需市場があります。中国の国内総生産(GDP)は14兆ドルを超え、アメリカに次いで第二位となっています。これは更に拡大傾向にあり将来的にはアメリカを越え世界第一位になると予測されています。
加えて、中国政府はハイテク産業に積極的な投資を行っています。中国政府が公表した「中国製造2025」では半導体・人工知能・バイオテクノロジーなど10の重点分野を特定し政府支援や優遇政策を打ち出しています。
また、そのような環境を背景に中国の企業は、柔軟性とスピードを武器に世界市場で戦っており、今や世界経済に大きな影響を与えています。例えば、中国のスマートフォンメーカーは世界の市場シェアを急速に拡大させており、中国のインターネット企業は世界で最も価値のある企業として成長しています。また、今後も世界経済に大きな影響を与え続けると考えられています。
このような近年の状況を踏まえると中国企業は、世界市場でさらにプレゼンスを発揮していく可能性が高く、その過程において中国企業の技術革新は、世界の産業構造に大きな変化をもたらす可能性があると考えられるでしょう。
中国のゲームチェンジャーとなりうる企業サービス紹介
ではそのような中で、中国において「ゲームチェンジャー」の役割を果たすサービスはどのようなものがあるのでしょうか。「ゲームチェンチャー」とは、今までにないアイデアや技術によって市場の状況を急激に変える製品や企業のことです。実際の中国における企業の取り組みを4つ紹介したいと思います。1. HuaweiのARメタバース観光サービス
皆さんもご存知の通り世界中でスマートフォンを展開するHuaweiは、近年独自の強みを生かし観光業界へ参入しています。2022年11月、拡張現実(AR)を使用して、遠隔地の観光スポットや文化的遺産を体験できる新しいメタバース観光サービスを発表しました。このサービスは、HuaweiのARグラスを使用して、ユーザーが世界中のさまざまな場所に「旅行」できるサービスです。
対象とする場所は、世界で最も人気のあるニューヨークのタイムズスクエアからロンドンのバッキンガム宮殿などの観光地が含まれており、ユーザーはこれらの場所を自由に探索することができます。また、このコンテンツでは仮想ガイドが設置されているため、それらの場所の歴史や文化について学ぶこともできます。
このHuaweiのARメタバース観光サービスは、新型コロナウイルスが世界的に感染拡大し旅行が制限された中で生まれ、気軽に手頃な価格で旅行できるようになることが期待されています。また人々が世界について学び、異なる文化を体験する新しいサービスが提供される可能性もあるでしょう。
この観光サービスは現在、中国でのみ利用可能となっていますが、将来的には中国以外の国々へも拡大する計画があります。
このようにARメタバース観光サービスは、コストと手間をかけずに、世界中のさまざまな場所を体験できる新しい方法として観光業界に注目されています。このサービスは観光業界にイノベーションをもたらし、人々の世界を体験する方法が変わる可能性に期待がもたれています。
2. UISEEの無人特殊車両
UISEEは、自動運転技術を開発する中国のテクノロジー企業です。同社は2014年に設立され、中国の広東省深圳市に本社を置いています。この無人特殊車両は、人では危険またはアクセスが困難な環境で使用される車両で、運行、運搬、仕分けなどの作業だけでなく、監視、警備、清掃など様々な業務に使用されています。現在、鉱山、建設、農業、ロジスティクスなど既に多様な業界で活用しています。
無人特殊車両の特徴はLiDARセンサー、カメラ、レーダーなどのさまざまなセンサーで構成されていることです。これらのセンサーを使用することで、車両は周囲の環境を認識し、クラウドコンピューティング及び人工知能を駆使して運行することができます。従来の有人車両と比較して、従来の車両が到達できない場所へより安全でより効率的に移動することができます。また、より生産的な方法で作業を実現することができるなど多くのメリットがあるため、自動運転技術の分野でますます影響力を高めています。
また、これらの製品は現在、運用・開発においてはまだ初期段階にあり、今後より多くの業界に新しい技術の創出ができることが期待されています。あらゆる人的作業を伴う現場においてゲームチェンジャーになる可能性を秘めています。
3. ByteDanceのVR・ARサービス
ByteDanceは、TikTokなどの動画共有サービスを運営していることでよく知られている中国のテクノロジー企業です。同社は現在VRやARを活用した没入型技術サービスを提供しています。2021年、ByteDanceはVRコンテンツの作成と配信のためのプラットフォームであるPICOを買収し、PICOのVRブランドを利用することで、世界中の市場に参入したいと考えています。
また、AR製品分野においては、ARグラスやヘッドセットを開発するスタートアップ企業に投資を行い、TikTokユーザーが仮想世界で相互リンクできるような世界観をめざしています。このようなVR・ARサービスへの取り組みは、同社が掲げる没入型技術分野でリーダーになるための戦略の一部です。
分野別の取り組み紹介
ここでByteDanceが提供するVR・ARサービスを分野別にいくつか紹介したいと思います。・教育分野
学生が仮想世界で学習できるVR・ARアプリケーションを開発。これらのアプリケーションは、学生が新しいことや既存の知識をこれまでとは異なる体験で得ることが可能となります。
・エンターテインメント分野
ユーザーが仮想世界で他の人と相互リンクできるVR・ARゲームやアプリケーションを開発。これらのアプリケーションは、ユーザーが楽しんだり、新しい友達を作ったり、新しい世界を探索したりすることが可能となります。
・ビジネス分野
企業が仮想世界で顧客と交流できるVR・ARアプリケーションを開発。これらのアプリケーションは、企業が顧客との関係を構築したり、新しい製品やサービスを販売したりすることに役立ちます。
これらは、ByteDanceのVR・ARサービスの一例です。このような取り組みも現在はまだ初期段階のようですが、既にあらゆる分野の主要なプレーヤーとなっています。
同社は没入型技術サービスを駆使して、人々が学び、楽しみ、ビジネスを行うための新たな方法を提供するとともに様々な業界に技術革新を起こすゲームチェンジャーとなる可能性があります。
4. Ankerのモバイルバッテリー
Ankerは既にモバイルバッテリー業界のゲームチェンジャーと言える企業ですが、代表的な例として紹介したいと思います。同社は、モバイルバッテリー市場に新たな価値を提供した中国のテクノロジー企業です。これまで高品質な製品を低価格で提供することで市場をリードしてきました。特に充電技術に力を入れており、独自の急速充電技術「PowerIQ」を搭載した製品を全世界で販売しています。実際に世界中のユーザーから高く評価されており、その理由として高品質・低価格・高速充電・デザインが挙げられます。
従来、中国製品は、安かろう悪かろうで模倣品が多いと言われてきましたが、その全てを覆しているのが同社の製品です。
独自のサプライチェーンにより品質の高い素材を調達し、独自の急速充電技術「PowerIQ」を搭載することで、他のモバイルバッテリーよりも高速充電が可能です。デザインにおいてはスタイリッシュでコンパクトな見た目で、かつ低価格となっており、モバイルバッテリー市場にとって革新的だっただけでなく、従来の中国製品に対する悪いイメージを完全に払しょくすることに成功しました。
まとめ
ここまで中国企業を4社紹介してきましたが、これ以外にも中国では多くの企業においてテクノロジー業界のゲームチェンジャーとなる可能性を秘めています。日々革新的な製品やサービスを開発し、世界市場でその存在感を示しています。おそらく今後も中国企業がテクノロジー分野において世界に大きな影響を与え続けることは間違いありません。その背景には、中国独特の環境があるのかもしれません。しかし、世界市場で戦うことにおいて条件は同じです。世界市場で戦うには、このような中国企業の台頭に注意を払い、適応することが必須です。そのためには、より早く多方面に情報収集を行い、投資を行い、競争力を高め、日本企業の独自の強みを持って将来のイノベーションの中心で競い合うことを期待したいと思います。
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