グローバルコラム

インド物流市場の概況と市場参入のポイント

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株式会社gr.a.m
代表取締役

谷村 真

インドの物流市場は急速に拡大を続けており、近年、世界的に注目を集めています。日本の大手企業、中小企業にとってもインド市場進出に対して大きなビジネスチャンスが訪れているといえます。今回は、インド物流市場の概況と成功事例、インド物流市場への参入のポイントについてご紹介します。

インド物流市場概況

インドの物流市場は、今後5年間で年8%の成長率で拡大し、2025年には3,300億ドルに達すると予測されています。この拡大は、急速に発展するEC業界、物流業界の技術的進歩、小売市場の拡大などいくつかの要因が考えられます。

インドの需要分野別支出額

それでは、インドの物流業界を需要分野別にみていきましょう。
2021年インド国内の都市間における物流支出は2,090億米ドルで、物流支出全体の約87%を占めています。
オンライン及びスポット市場が支出全体の63%を占め、業務取引市場は37%を占めます。インド国内の都市間を移動する際の物流費2,090億米ドルのうち、メトロシティ(インド主要都市)が40%(840億米ドル)もの割合を占めています。

インドの貨物事業は巨大なスポット市場があり、年間取引額は1,200〜1,300億米ドルで、約10%の成長率で拡大しています。
農業がスポット市場全体の25%を占めており、中堅・中小企業であるMSME(Micro, Small & Medium Enterprises)は、一度に取り扱える量が少量のためスポット市場で事業を行い、トラック稼働全体の25%を占めています。残りの50%は、FTL(Full Truckload)トラック(貸切便)をスポットで予約する大規模な製造企業によって支えられています。

インドの継続的な経済成長は、まだまだ未熟なインフラや物流・マテリアルハンドリング部門に大きな需要をもたらしています。

インドの輸送形態

次に物流業界の輸送形態別にみていきましょう。
インドの輸送形態は、鉄道、道路、空路・水路に分けられます。

鉄道は、国内のモーダル輸送全体の31%を占めています。鉄道は、長距離の貨物輸送において最も安価な選択肢のひとつですが、時間的制約や貨物の安全性に関する懸念が残ります。また、鉄道への投資が不足しており、貨物輸送量全体に占める鉄道のシェアは年々低下しています。

現在、物流市場は道路輸送がメインでありシェアも年々上昇しており、この傾向は今後も続くと予想されています。道路輸送は2番目にコストの高い輸送手段であるにもかかわらず、トン数ベースで貨物移動全体の約60%を占めています。

その他、インドでは航空旅客市場が注目されているため、航空貨物分野もインドが経済的に成長するために重要な要素になっています。モーダルミックスに占める航空輸送の割合は、全体の2%未満です。航空貨物として運ばれるものは、園芸品や生鮮品のほか、医薬品、ヘルスケア、電子機器、無線電話、自動車用スペア部品など、時間に制約のあるものが多くを占めています。

インドの貨物輸送に占める水路の割合はわずか8%です。水上輸送は、最も高い輸送能力を持ち、最も低コストでかさばる貨物の長距離輸送に適しているという点で、他の輸送手段より明らかに優れています。インドは三方を海に囲まれているため、7,517kmという広大な海岸線を持ち、全国に11の主要港と168の小中規模の港があります。


図 インドの輸送形態

物流に関わるインフラ整備

インド政府は今後5年間で1兆4,000米ドルの投資を予定

インドでは、農業経済からサービス経済への移行が進み、都市化が進んでいるため、強固なインフラが必要とされています。
国家インフラ・パイプライン(NIP:National Infrastructure Pipeline)では、今後5年間で1兆4,000米ドルの資金が投入される予定であり、各州のインフラ・プロジェクトにて公開されています。各インフラに関して、それぞれの目標は以下になります。

道路

道路の総延長目標は1.99lakh kmで、民間ディベロッパーが関与することで増加する見込みです。具体的には、民間セクターによる実施率が39%となる予定であり、道路への総投資額は269億米ドルに上ります。

鉄道

鉄道では、旅客列車500両と駅225ヶ所の民営化を予定しています。また、貨物回廊の完全運用開始を予定しており、投資総額は188億米ドルに上ります。

倉庫

インドの倉庫市場は2020年には120億米ドルに達し、現状更に速いペースで成長しています。倉庫は2017年以降、65億ドル以上の投資を集めており、今後5年間でさらに多くの投資を集めると予想されています。

コールドチェーン

インドのコールドチェーン市場は、2021年に190億米ドルに達しました。今後2022年から2027年までの期間にCAGR14.72%で成長し、2027年までに439億米ドルに達すると予測されています。

公式データによると、インドでは冷蔵トラックが約7,000〜8,000台稼働しています。現在、インドの野菜・果物の総生産量は2億5,800万トンですが、その内、冷蔵トラックで輸送されているのは360万トンでわずか2%に留まります。最新のデータによると2022年から2027年にかけて、インドの冷蔵トラック市場は年平均成長率18.8%で成長すると予想されています。

インド物流業界における成長ドライバー

インドの物流業界の成長を牽引しているものとして、いくつかあげられます。例えば、自動車、医薬品、FMCG(Fast-Moving Consumer Goods)、小売などの産業の急成長、インドと海外の貿易の増加、FDI規制、民間企業の参入、物流インフラの整備などの政府の取り組み、第三者サービスプロバイダーへの物流アウトソーシングの増加などが主な要因となります。
今後数年間、業界にプラスの影響を与えると思われる主なトレンドは、グローバル企業の参入、マルチモーダルの物流サービスプロバイダーの増加、投資の拡大です。

主なローカル物流企業

TCI、GATI、Blue Dart、Container Corporation of India、Swastik Roadlines Private Limited、Jaipur Golden、Continental Warehousing Corporation Limited、Siesta Logistics Corporation、Allcargo Logistics、Arshiya International、Shreyas Shipping and Logistics、SICALなど

主な外資企業

FedEx, Kintetsu World Express, TNT, DHL, Maersk, Halcon, DPI, APM, Gateway Rail, Gateway Distriparks, Aegis Logistics, UPS, Kuehne and Nagel, CEVA logisticsなど

日本企業にとっての可能性

物流業界は100%外資による直接投資が可能です。
空港、港湾、道路、高速道路、物流サービス、貨物輸送サービス、倉庫・保管などのインフラ・物流分野の大半で100%外資直接投資が認められているため、外国企業にとって大きなチャンスとなります。
このような大規模な取り組みや投資に利用できる公共部門の資源は限られているため、インド政府は民間部門や外国の多国籍企業がより積極的な役割を果たすことを奨励し、投資を誘致するために税金の免除や控除などの一連のインセンティブを設定しています。

インド物流市場での成功した日本企業の事例

ここからは、インドの物流市場で成功した日系企業の事例をご紹介します。

ツバキコンベヤシステムズ

ツバキコンベヤシステムズインディア(旧マヒンドラツバキコンベヤシステムズ)は、日本のツバキグループの100%子会社です。同社は、バルクハンドリング装置やシステム、様々な特殊用途のユニットハンドリングシステムを提供するリーディングカンパニーです。プネー近郊のピランガットに最新鋭の製造施設を有し、製造工場には金属成形機、大型加工・組立室、ショットブラスト、塗装室、オーブンが完備されています。


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インド物流市場における日系零細・中小企業のビジネスチャンス

続いて、日系企業がこれからインド物流市場へ参入する際にビジネスチャンスのあるサービスをまとめました。

レンタカー

レンタカーは伝統的なビジネスアイデアではありますが、この種のビジネスは都市部だけでなく、小さな町でも成功する可能性があります。但し、これらの企業は、地方のビジネス需要を理解する必要があります。同地域で一定の距離を移動したいひと、それぞれの都市から外の地域へ行きたい人々がターゲットとなります。

救急搬送サービス

救急搬送サービスは、他のビジネスと比較して資本投資を多く要しません。多数の医療緊急事態を生んでいる状況は需要があることを表していますが、地元の病院、老人ホーム、診療所などと強いネットワークを持つ必要があります。

タクシーアプリ

インドでは、アプリを使ったタクシー事業が急成長しています。OlaやUberのような大企業は、ほぼインド全土で営業しており、毎日の通勤をサポートし交通市場を獲得しています。また,これらの企業はユーザーの車を利用するオプションサービスを提供しており更なるユーザーの利益を作り出しています。

カーシャトルサービス

カーシャトルサービスは、会社に勤める従業員のための企業向け移動サービスを指します。これは、会社の従業員が毎日の通勤のために利用します。また、会社の従業員は、第三者機関を通じてタクシーを予約し帰宅することもあり、最近では、夜勤の女性のためのタクシーなども導入されています。

コールドチェーン

コールドチェーンは、熱に弱い商品の安全な輸送を保証するビジネスのため、厳密な温度管理を求められます。そのため高額な資本投資が必要なだけでなく、注意しなければいけない点も多くあり、業界では収益性の高いビジネスとなっています。

家畜輸送サービス

インドの家畜輸送は、鶏卵、鳥、ヤギ、ヒヨコなど、輸送時に温度管理や揺れ防止など特別なインフラを必要とする家畜を慎重に輸送するもので、特に既存事業者などがインフラ投資をしていないことから大きなチャンスがあります。

まとめ

このようにインド物流業界では、インド独特の物流事情や社会事情によって多くのチャンスが存在します。今回は物流業界に注目をしましたが、このような環境は物流業界以外にも存在します。
チャンスをつかむためには、ターゲットとする業界においてインド独特の業界事情や社会事情をいち早く知ることで、自社の事業に大きなインパクトをもつ新事業が生まれるかもしれません。
今回共有した情報が皆さんの事業成長の一助となればと思います。



<会社概要>
株式会社gr.a.m
東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティタワー24F
03-6859-2252
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