グローバルコラム
アフターコロナにおける海外展開、インドの化粧品・美容製品市場への進出の秘訣
公開日:
株式会社gr.a.m
代表取締役
谷村 真
コロナ禍において海外で新たにビジネス展開をすることは、渡航規制などによる物理的・心理的な要因で難しい状態が続いていますが、アフターコロナを見据えて少しずつ海外進出の検討をし始めている企業もあるのではないでしょうか。今回は、特に急速に拡大しているインド市場、中でも最近関心が高まっている化粧品・美容製品分野について改めて整理したいと思います。
インドの化粧品・美容製品市場の動向
インドの化粧品・美容製品分野(BPC:Beauty & Personal Care)は、着実に成長を遂げています。この分野は、主にボディケア、フェイスケア、ヘアケア、ハンドケア、カラーコスメの5つの主要カテゴリーに分類されます。インドのBPC分野は現状150億米ドル程度の規模と推定され、2025年には200億米ドルに達すると予想されています。マーケットセグメントでは、中間層が2.0%で成長しているのに対し、高所得層は6.3%で成長しており、インドの一人当たりのBPCへの支出は、インドのGDP成長率に合わせて増加しています。
この国際的なブランドがインド市場へ参入しはじめた時期は90年代まで遡ります。当時、インドは経済の自由化に舵を切り、外資の進出や輸入における大きな規制改革によって経済解放政策をとっていたことから始まりました。
一方、インドのローカルブランド(地域ブランドと国内ブランド)は、中間層以下の最もボリュームの多い層が利用する地方マーケットで大きな存在感を示していますが、プレミアム/プレステージ市場は国際ブランドに大きく支配されているのが実情です。
インドでは、デパート、スーパーマーケット、ハイパーマーケット、専門店チェーン、ショッピングモールなどの組織化された近代的な小売チャネルに加え、化粧品ブランドの直販や競争の激しいeコマース市場が急速に成長しています。
インド市場進出への成功のポイント
さて、インドには世界最大級の中間層マーケットがありますが、彼らへのアプローチは非常に難しいため、インドにおけるマーケット展開も非常に難易度が高いということを心得ておく必要があります。そこでここからは、インドでマーケティングを成功させるためのポイントを5つ簡単にご紹介したいと思います。1. 採用する人材は化粧品市場における業務経験者に
新興国マーケットへ進出するときは広く浅い経験では何にも活かすことはできません。その業界の専門知識や経験が豊富な人材を採用することが大切です。2. 法律、会計、税務のために強力なバックオフィスの構築
インドには、許認可に関わる規制、複雑な税務など日本とは異なる特有の商習慣があります。スムーズに事業展開したいのであれば強力なバックオフィスの存在は欠かせません。3. 西インドと北インドから進出
インド市場は広大ですが、地域によってはビジネスの顧客になりえない、もしくは時間がかかるといったケースが考えられます。まずはデリーやムンバイに代表される比較的、成長している地域から始めると良いでしょう。4. 製品の価格とサイズが重要
地域性やターゲットによって最適な商品は変わります。例えば中間層以上はクオリティを重視、 それ以外の層は価格を重視といったようにターゲットに合わせた規格で展開する必要があります。また、化粧品・美容製品分野でトップを走るユニリーバでも「価格が高ければサイズを小さくする」というように消費者の購買力に合わせてサイズを変化させることを行なっています。インド人は小さなサイズで低価格のものを頻繁に購入するといった傾向があり、価格とステータスに非常に敏感です。大量に販売したいのであれば、マーケットセグメントにおけるピラミッドの最下層(特に農村部の市場)をターゲットにすることが重要ですが、価格重視、ブランド重視のビジネスの場合、都市部の市場では中間層が重要であるといえます。
5. 類似したブランドが近隣にあるロケーションから出店
高級・プレミアムブランドも成長していますが、市場は裕福な都市に集中しています。これらの都市には、プレステージ・高級ショッピングモールといった高級ブランドショップが通りに集中した場所があります。インド市場へ参入する際は、まずこのようなロケーションに専用のショップを構えることが成功の秘訣であり、その専用ショップは自社ブランドと類似したデザイナーズブランドや小売ブランドがあるショップの近隣に構えることが推奨されます。インドマーケットでは、このようなシンプルなルールを徹底することが大切です。インドの消費者を包括的に理解した上で、彼らがどのように行動し、何を求めているのかを把握することが重要になります。
インドの販売戦略
インドにおける販売戦略及びチャネル戦略は、商品やサービスによって異なるところもありますが、メーカーからディストリビュータ、ホールセラー、小売りといった広大な国土をもつインド特有の流通構造の仕組みに大きな特徴があります。その特徴を捉えて自身にあったパートナーを見つけることが現地販売戦略の最も重要な要素だといえます。また、インドの化粧品市場規模は大きく、多様で複雑な文化でもあるため、マーケティングや流通に対するアプローチは正確である必要があります。そのため全国展開している商品では、おおよそ40~80と複数のディストリビュータと提携しているケースがほとんどです。
インドの流通チャネル
最後に、流通チャネルについて少し触れたいと思います。インドでは、デパート、スーパーマーケット、ハイパーマーケット、専門店チェーン、ショッピングモールなどの組織化された近代的な小売チャネルに加え、直販や化粧品ブランドの競争の激しいeコマース市場が急速に成長しています。このような複数ある販売チャネルの中でも、雑貨屋さんが引き続きリードしています。
しかし、eコマースも忘れてはいけません。インドはIT大国と言われるようにeコマース市場も急速に大きく成長しています。
商品にもよりますが、マスマーケットへ進出するためには、まず初めに大都市のプレミアムマーケットで展開するか、もしくはeコマースでブランド認知度をあげてから進むことをお勧めします。
マスマーケットを狙うのであれば全国紙で広告することでディストリビュータの目にとまることが可能となります。彼らは日本製品のクオリティが高いことを知っているので、それを足がかりにして展開するといった形が王道な手法となります。
パートナー探しの注意点
インドでは長年かけて築かれたルールと流通構造があるため、目的に合致した特徴を持つホールセラーと提携することが重要です。つまりいかに優秀なディストリビュータと連携するのかが成功のカギだということがいえるでしょう。では、どのようなパートナーを選定すればいいのでしょうか。これは以前のコラムでもご紹介していますので、ここでは簡単に記載します。
参考:シリーズ 成長市場で勝つ (4)新興国パートナー探しで陥る典型的な落とし穴
https://www.cross-m.co.jp/column/global/gram20170509/
・複数の製品の取り扱いは避ける。
・資金力がないところは避ける。
・自分のブランドにどれくらい集中してくれるか。
このようなパートナーを獲得するためにも、ブランドの認知度は重要です。認知度があることによって取引条件は大きく変わります。
取引条件において特に重要なのが、金利の高いインドでは在庫や支払いリスクを誰が持つのかといった点は注意しなくてはなりません。この点はブランド認知によって大きく変わることでしょう。
まとめ
近年、急速に発展しているインド市場ですが、新規参入することは容易ではないことがお分かりいただけるかと思います。ただ、一方で世界が注目する最大級のマーケットであることも確かです。このマーケットで成功するために、知識と実行力をもって取り組むことでインドマーケットを攻略して欲しいと思います。
今回のコラムがぜひ皆様のアフターコロナで取り組むインドマーケット攻略の参考になりますと幸いです。
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