グローバルコラム
今後のデジタル通貨の可能性 キャッシュレス大国、中国の「デジタル人民元」から考える
公開日:
株式会社gr.a.m
代表取締役
谷村 真
最近、“デジタル人民元”が注目を集めています。中国は2020年10月に深セン、12月には蘇州で大規模なデジタル通貨の試験運用を実施しました。ユーザーは、デジタル通貨の試験的な活用に興奮した模様です。
私たちは、「グローバルビジネスをもっと簡単に」という標語でビジネスを展開する、リサーチ・マーケティング企業です。業務の中には海外ニュースを追いかけるといったことも含まれますが、私自身のキャリアが中国から始まったということもあり、特に中国のニュースは注視しています。中国のニュースでは、いつも最先端の取り組みが紹介され、我々ビジネスマンを興奮させてくれます。
その中で今回、デジタル人民元を取り上げたのは、今後の世界を大きく変えるひとつのきっかけになるのではないかと思ったからです。
デジタル人民元は、中国共産党中央委員会が国家経済社会開発第14次5カ年計画と2035年ビジョン目標の策定に関する提案をもとに、デジタル通貨の研究開発を着実に推進する取り組みです。そのような枠組みの中で中国人民銀行は、広東省深圳や北京の雄安新区、江蘇省蘇州、四川省成都の4都市に、2022年の北京冬季五輪会場予定地を加えた、いわゆる「4+1」でデジタル通貨の実用化に向けた試験運用を開始しました。
私たちは、「グローバルビジネスをもっと簡単に」という標語でビジネスを展開する、リサーチ・マーケティング企業です。業務の中には海外ニュースを追いかけるといったことも含まれますが、私自身のキャリアが中国から始まったということもあり、特に中国のニュースは注視しています。中国のニュースでは、いつも最先端の取り組みが紹介され、我々ビジネスマンを興奮させてくれます。
その中で今回、デジタル人民元を取り上げたのは、今後の世界を大きく変えるひとつのきっかけになるのではないかと思ったからです。
デジタル人民元は、中国共産党中央委員会が国家経済社会開発第14次5カ年計画と2035年ビジョン目標の策定に関する提案をもとに、デジタル通貨の研究開発を着実に推進する取り組みです。そのような枠組みの中で中国人民銀行は、広東省深圳や北京の雄安新区、江蘇省蘇州、四川省成都の4都市に、2022年の北京冬季五輪会場予定地を加えた、いわゆる「4+1」でデジタル通貨の実用化に向けた試験運用を開始しました。
デジタル人民元とは
デジタル人民元は、中国人民銀行が発行するデジタル通貨です。デジタル通貨は、これまでの通貨と比べて性質が変わるわけでもなく、これまでにない新しい支払い手段が増えるというわけでもありません。これまで紙幣や硬貨だった通貨が、デジタルデータになったという理解が近いと思います。つまり、紙幣や硬貨などは物理的な形態で存在し、デジタル人民元はデジタル貨幣として存在するということです。言い換えると、デジタル人民元は中国の中央銀行である中国人民銀行が発行する国家信用裏書を持つ、デジタル法定通貨であると言えます。
中国でデジタル通貨の導入が進む背景
中国人民銀行は2014年にデジタル人民元の研究に着手し、一部地域で限定的な試験を経て、2020年10月に広東省深セン市で5万人、12月には江蘇省蘇州市で10万人を対象に実証実験を行いました。各国が競ってデジタル通貨を研究していますが、大規模試験運用を踏まえた中央銀行の発行する法定通貨としては、世界初のデジタル通貨となりました。中国が大規模な試験運用まで早期に進められた背景には、中国のオンラインペイメントがすでにインフラと言えるほど国民生活に深く根付いていることが大きく影響していると考えられます。中国の代表的なオンラインペイメントサービスとしては、AlipayやWeChatPayなどが挙げられます。
オンラインペイメントサービスとデジタル通貨の違いと位置づけ
ここでまた一つの疑問が生まれます。既に根付いたオンラインペイメントサービスとデジタル通貨の使い分けや位置づけはどのようになるのか、両者が共存することは可能なのかといった点です。オンラインペイメントサービス影響を受け、中国では紙幣・硬貨といった現金の利用が激減しています。すでに中国のオンラインペイメントシステムの利用率は8割を超えており、世界でも最高レベルにあります。一方、デジタル通貨と一般的なオンラインペイメントサービスはレイヤーが違います。オンラインペイメントサービスは決済インフラ、つまり財布であり、デジタル通貨は財布の中身だと言えます。
オンラインペイメントサービスには、ユーザー視点でいくつかの欠点があり、デジタル通貨はそれを補完することができます。例えば、オンラインペイメントサービスは、銀行口座に紐付いている必要がありますが、デジタル人民元は口座を持てない国民も活用することができるようにデザインされています。
また、オンラインペイメントサービスは、ネットに繋がっていないと使えず、一度に使える金額に上限がありますが、デジタル人民元はネットに繋がっていなくても使えるように設計され金額の制限もありません。つまり、デジタル通貨はオンラインペイメントサービスのようなツールではなく、通貨そのものだと理解することができます。
今後のデジタル人民元の研究開発は、デジタル経済の条件下で法定通貨としての要求に対応し、現金ではかなわなかった小売決済の利便性や安全性を確保し、偽造防止レベルを向上させるよう進んでおり、中国のデジタル経済をより発展させていくものだと考えられます。
デジタル人民元の現在の使われ方と今後の可能性
中国のメディアによると、蘇州の大規模試験運用では、まず抽選で選ばれた市民のスマートフォンにデジタル人民元を入れるウォレットアプリをダウンロードした上で、200元分のお金を無償で支給し、指定されたオンラインストアや商店、レストランの支払いに使えるものとして始まりました。ネットに接続した状態で使用できることはもちろん、ネットと繋がっていない状態でやりとりするシステムも試験運用されていて、オフラインではスマホ同士を接触させるだけでお金の受け渡しが完了するようです。これは、ブロックチェーンの技術が実現した方法で、ユーザーが取引を行うときにバックオフィスシステムに接続するのではなく、デジタルウォレットでユーザーを認証して情報を確認し、支払いを行うことができます。つまり、ユーザーは財布からお金を出し、相手の財布にそのお金入れるという、リアルの取引と何ら変わらない形でデジタル上のお金をやり取りすることができるのです。加えて、手数料もかからないのでサービスを提供する側とされる側、双方に大きなメリットがあります。
また、デジタル人民元には、中国に来る外国人に対して存在する多くの問題を解決できる可能性が期待されます。現状、中国以外の国に住む人は中国に口座を持てないため、デジタル社会に移行する中国において、オンラインペイメントサービスを利用することはできず、利用面と心理面で不都合を感じます。私も最新のデジタル社会を体感しようと中国に行ったのにも関わらず、色々思うようにいかなかったことを思い出します。デジタル人民元には、このような状況を解決できる期待感があります。
まとめ
今、世界中で社会の在り方が大きく変わろうとしています。特にデジタル社会への移行といった点で、中国は他国の半歩先を行っています。我々も来る一歩先の未来を見据え、そのような情報へ触れて、取り巻く社会環境の変化を予測しながら、関わり方や楽しみ方を見出していくことで、それぞれの将来を描いていければと思います。みなさん、中国要注目です!<会社概要>
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