グローバルコラム
中国人の憧れはカッコいいマイカー!
公開日:
押し寄せてくる自転車の大群―― そんな中国の象徴的な風景が見られなくなって久しい今日この頃。かつて人民の足だった自転車の替わりに、中国の道路の主役となったのが“クルマ”です。
自転車の群れは何処に? 道を埋め尽くすクルマが今の中国の顔
大都市の主要道路は、片側3~5車線とかなり広め。首都北京のメインストリート・長安街などは、有事に滑走路として使用できるようにと、なんと道幅は100メートル以上! にもかかわらず、朝夕のラッシュアワーには道路にクルマがびっしりの駐車場状態に・・・そんな世界の注目を集める中国の自動車市場には、幾つかの中国ならではの特徴があります。
欲しいのはカッコいいクルマ、ポイントは注目度
近年、中国の道路には「すごい!」と目をひくクルマが多数走っています。ランボルギーニやフェラーリなど高級スポーツカーもちらほら見ますが、近頃、劇的に数を増やしているのはSUV車です。もちろん、一般庶民にとって高級車は高根の花。彼らがローンを組んで購入するのは大衆車なのですが、ボディにメタリック加工を施したり、巨大なエアウイングを取りつけたり、ブランドマークを高級ブランドに変えたり、カッコよくしよう!とがんばる人も少なくありません。少々理解に苦しむようなセンスのものもありますが、改造した作品には彼らの“憧れ”が投影されているわけで、いつか所得が増えたら、やっぱり高級ブランド車を買うんだろうことは、容易に推測できます。
欲しいのはやっぱり外車、ポイントは安全性
もう一つの特徴は、道路を走る大半が海外ブランド(※2)だということです。具体的な数字を見ると、外国ブランドと国内ブランドの比率は7:3。富裕層が集中する沿海地域では、前者の割合が更に高くなっています。これは外車のほうがカッコいいからという以外に、“安全性”という切実な理由があるようです。
90年代の中国車は「よくこれで走れるな・・・」というレベルのものが沢山ありました。エンストや電気系統のトラブルはよくあること。運転中に助手席のドアが落ちたり、突然ハンドルが取れたり――なんてこともありました。
現在、中国車の品質はだいぶ改善されていますが、道路の質の悪さや運転の粗さから、交通事故は日常茶飯事。そんな状況ですから、やはり安全で頑丈な外国ブランドのクルマが欲しい――となるわけです。
家電やPC、通信機器で着実にシェアを伸ばしつつあるMade in chinaブランドが、今後、自動車市場でどんな動きを見せてくれるのか? 技術力の向上、高給化へのシフト、新エネルギー車の開発あたりが、動向のキーワードとなりそうです。
※1 全国民用自動車…個人乗用車、政府公用車、社用車、農業用車両など。軍用車両、警察車両、特種用途自動車(救急車や消防車、清掃車)などと対する車両。
※2 海外ブランドのクルマ…海外の自動車メーカーの中国単独進出は認められていないため、海外ブランドとはいえ、ほとんどが地場メーカーとの合弁による中国産。富裕層は純粋輸入車にこだわり、高い関税を払っても漢字表記のない輸入車を購入する。
※3 2012年度の総販売台数…世界1位・中国1930万6400台(前年比4.3%増)、2位・アメリカ1449万1873台(13.4%増)、3位・日本536万9721台(27.5%増)。
関連ページ