Future Marketing
【前編】インターネットだからこそ丁寧な説明が求められる
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従来の生命保険業界の常識を破り、インターネットで24時間いつでも申込できる生命保険会社として2009 年にサービス提供を開始したライフネット生命保険。国内外の大手生命保険会社を親会社としない、独立した保険会社の誕生は、日本国内では戦後初めてのことでもある。同社のマーケティング部の岩崎那歩氏に話を聞いた。
スマートフォンの普及でインターネットから保険に入ることへの抵抗はなくなっている
堀:ライフネット生命保険のプロモーションチームは少数精鋭で業務にあたっているそうですね。岩崎:部長を含めて4人です。プロモーションチームでは、企画から広告枠のバイイング、運用指示、クリエイティブディレクションなど、全て4人で担当しています。
堀:岩崎さんはこの企画に登場いただいた方の中で最年少クラスです。マーケティング部の年齢構成は、全社的に見ても平均年齢は低いのでしょうか。
岩崎:会社全体の平均年齢はすごく若いというわけではないですが、マーケティング部は会社平均よりやや若いメンバーが集まっている感じです。
当社は転職者が多く、私たちのチームも例外ではないのですが、マーケティング部は前職が生命保険会社というメンバーが少ないです。従来の生命保険業界の切り口に囚われずマーケティングを考え、プロモーションを行うことを目指しています。
堀:それぞれ多くの企業では単独の部署があるくらいの役割を少人数で担うということは個人に与えられる裁量も大きいのではないでしょうか。岩崎さんはどの領域を担当することが多いのですか。
岩崎:私はウェブプロモーション全般を担当しています。ウェブ広告に関しては、ディスプレイ広告やリスティング広告、ランディングページなども担当しています。
岩崎:スマートフォンも含めたインターネットから生命保険に加入した人は全体の2.2%だそうです。(平成27年度 生命保険文化センター調査)。当社は、30代〜40代をメインにしています。この世代はインターネットで買い物することに比較的抵抗が少ないのではないかと考えています。
当社のサービス提供を開始したのが2008年。その11年前に比べると、保険のような金融商品をインターネットで加入・購入することへの抵抗は減っているように感じます。
テレビ&スマホのダブルスクリーンがテレビCMに新たな価値を与える
堀:広告のメッセージも法的な制約があると思います。そこにも苦労があるのではないでしょうか。岩崎:表現はかなり気を使っています。私たちは営業職員がいないので、申込時はもちろんですが、テレビCMでもWEB広告でも丁寧に商品の説明をすることは大事です。
堀:テレビCMとウェブの広告で表現やメッセージの伝え方に違いはありますか。
岩崎:テレビCMは完全視聴でながら見が多い。多くの人がスマートフォンなどとのダブルスクリーンで見るものなので、重視されるのはアテンションです。
一方ウェブはスキップが可能なものが多いので、コミュケーションを継続させる部分で難しさはあります。ただ、ウェブは一つのコンテンツを見たあとに、次はこういう内容を見てもらい、最終的にサイトへ来てもらおうというストーリーを作ることができる点はテレビとは違います。
以前は、テレビCMを少し加工したものをウェブで転用したところ、苦情が寄せられたことがありました。スキップできるものであるからこその難しさがあり、いかに嫌われずに消費者の態度変容を促すかが重要になると感じる経験でした。
若年層を中心に、スマホ経由の申し込みが増えている
~後編に続く(8/30公開予定)~
ライフネット生命保険株式会社
営業本部 マーケティング部
岩崎 那歩
株式会社クロス・マーケティンググループ
リサーチ・コンサルティング部 コンサルティンググループ コンサルティングディレクター
堀 好伸
<プロフィール>
生活者のインサイトを得るための共創コミュニティのデザイン・運営を主たる領域とする生活者と企業を結ぶファシリテーターとして活動。生活者からのインサイトを活用したアイディエーションを行い様々な企業の戦略マーケティング業務に携わる。「若者」や「シミュレーション消費」を主なテーマに社内外でセミナー講演の他、TV、新聞などメディアでも解説する。著書に「若者はなぜモノを買わないのか」(青春出版社)、最近のメディア出演「首都圏情報 ネタドリ!」(NNK総合)、「プロのプロセスーアンケートの作り方」(Eテレ)