アクセシビリティとユーザビリティの違い|改善する方法とは
公開日:
アクセシビリティやユーザビリティの改善は、自社サービスをより良いものにして顧客獲得につなげるために有効な手法です。アクセシビリティとユーザビリティには共通点もありますが、概念や対象が異なるため、両者を正しく理解し、適切に取り組む必要があります。
今回は、アクセシビリティとユーザビリティにはどのような違いがあるのか、アクセシビリティを改善する意義や具体的な改善方法を解説します。
アクセシビリティとユーザビリティの違い
アクセシビリティもユーザビリティもサービス改善に重要な要素ですが、概念や対象となるユーザーが異なります。アクセシビリティとユーザビリティの違いを具体的に紹介します。
アクセシビリティとは
アクセシビリティとは、物事に対するアクセスのしやすさのことです。年齢や障がいなどの個人の特性や身体的特徴、環境にかかわらず、あらゆるユーザーがサービスを円滑に利用できる状態のことを指します。
アクセシビリティが十分でないと、そもそも情報の取得や利用ができません。例えば、字幕のない動画、代替テキストのない画像、キーボード操作ができないサービスなどは、利用できない方がいます。利用できないユーザーを少しでも減らすことが、アクセシビリティの目的です。
ITツールやインターネットの活用が一般的になるなか、Web利用におけるアクセシビリティの重要性が高まっています。Webに特化したものはWebアクセシビリティと呼ばれています。
ユーザビリティとは
ユーザビリティとは、使いやすさを指します。アクセシビリティが確保されている前提で、想定したユーザーにとってサービスがわかりやすいか、目的をスムーズに達成できるかを評価するものです。
ユーザビリティは、ユーザーによって評価が異なる場合があります。高齢者と若者では、使いやすさを感じるポイントが違うためです。例えば、高齢者にとって視認しやすい大きな文字の画面はユーザビリティが向上しますが、若者にとっては一目で認識できる情報量が少ないため、ユーザビリティは低下すると考えられることもあるでしょう。
ユーザビリティの概念には、ユーザー層の幅広さは含まれません。ユーザー層が限定されるサービスの場合はユーザビリティを、幅広いユーザー向けのサービスであれば、アクセシビリティを指標にして改善を図ると効果的です。
アクセシビリティの改善が重要な理由
アクセシビリティの改善は、費用や時間を要しても取り組むべきことです。ここでは、改善が重要な理由と、改善によって得られる変化について解説します。
顧客満足度の向上につながるため
アクセシビリティは、幅広い層の人を対象にわかりやすさや使いやすさを提供するもので、ユーザビリティの考え方を内包しています。
アクセシビリティ=ユーザビリティではありませんが、アクセシビリティを改善することは、ユーザビリティの向上につながることも多くあります。サービスが使いやすくなれば、情報を簡単に見つけて利用できるようになるため、顧客満足度の向上も期待できます。
潜在顧客層の拡大につながるため
アクセシビリティを改善すれば、身体上や環境に問題があるなど、これまで利用が難しかった方もサービスが利用できるようになります。その結果、潜在顧客層を拡大でき、顧客数の増加が期待できるでしょう。
社会的責任に関わるため
アクセシビリティは、社会福祉にも関わります。身体的特性や環境にかかわらず、すべての方が等しく情報を入手できるようになれば、情報格差が解消され、生活の質が向上するためです。アクセシビリティが達成される環境では、誰もが能力を発揮できるようになります。高齢者や障がい者などの社会参加も進み、豊かな社会の実現につながっていきます。
法的義務に関わるため
アクセシビリティの達成は、「障害者差別解消法の改正」を守る意味もあります。
障害者差別解消法は、障がいを理由とした不当な差別や、権利の侵害を防ぐことを目的とし
た法律で、2016年4月の施行後、2021年6月、2024年4月に改正されています。2024年4月の改正では、障がい者などに対する合理的配慮や環境の整備が国や自治体だけでなく、民間事業者にも求められるようになりました。
Webアクセシビリティへの対応も義務化されるようになったため、法的義務を果たす意味でもアクセシビリティの改善は不可欠です。
アクセシビリティを改善する方法5選
アクセシビリティを改善するには、現在ユーザーが抱える問題点を把握し解消する必要があります。改善のポイントと具体的な方法を5つ解説します。
1.操作性を意識する
あらゆる人がサービスを使えるようにするには、操作性を向上させることが重要です。運動機能や視覚などの制限により細かな操作が難しい方には、ボタンのクリック範囲を大きくすると使いやすくなります。
キーボード操作で閲覧するユーザーや、視覚障がいのあるユーザーには長過ぎるスクロールや無限スクロールは操作が不便です。できるだけスクロールが長くなりすぎない画面構成にすることを推奨します。また、運動機能に障がいがある方が利用できるように、視線や音声によるコントロールに対応することも有効です。
2.可視性を高める
色覚特性がある方や高齢者、見えにくさのある方も利用できるようにするには、サイトの可視性を高めるのが有効です。具体的には、下記の対応が推奨されています。
・適切なタイトルをつける
アクセスするページがユーザーにとって必要であるかを事前に判断できるように、ページの内容に合った適切なタイトルをつけましょう。形式は「ページタイトル|Webサイト名」が推奨されます。サイト内検索の結果で重複が出ないようにすることも大切です。
・色のコントラスト比を適切にする
文字色と背景色のコントラスト比が低いと画面が見にくく、視覚に障がいがある方は文字の判別が難しくなります。誰もが視認でき、内容を理解しやすいように、最低限4.5:1の比率を保つようにしましょう。
・テキストリンクでリンク先の内容がわかるようにする
ページ内にリンクを設定する際は、曖昧な表現ではなく、テキストリングでどのページにリンクしているのかがわかるようにします。また、リンク先がページなのかPDFなどのファイルなのかも判別できるように記載します。
3.文字の読み上げ機能に配慮する
視覚に障がいがある方が音声のみでサービスを利用できるように、文章の読み上げ機能に配慮することも必要です。
読み上げが正確に行われるよう、半角カタカナや機種依存文字は使用しないようにしましょう。数字は、小数点や位取りのカンマに全角を使用してはいけません。半角表記でないと読み上げられないため注意してください。
4.画像に代わるテキストを入れる
視覚に障がいがある方や色覚特性がある方は、画像を認識できないことがあるため、画像の内容がわかる代替テキスト(alt属性)を設定します。代替テキストがあれば、スクリーンリーダーで情報を確認できます。
テキストを用意する際には、画像情報とギャップや齟齬がないようにしてください。装飾を目的としたイメージ画像など、説明が不要な画像には設定不要です。複雑な情報が含まれる画像には、別途補足情報を掲載すると良いでしょう。
5.音声をテキスト表示する
聴覚に障がいがある方は、音声の情報は把握できません。動画やナレーションなどの音声には、字幕を設定して、視覚的に確認できるようにしましょう。字幕は、音を出せない環境下でも役立つため、ユーザビリティにも寄与します。動画やナレーションの言語が母国語でない方への理解にも役立ちます。
まとめ
アクセシビリティとは、あらゆるユーザーがサービスを円滑に利用できるようにすることを意味します。アクセシビリティへの配慮は、顧客層の拡大や顧客満足度の向上につながるだけでなく、事業者が法的義務や社会的責任を果たすためにも重要です。自社サービスの操作性や可視性、表記方法などを見直し、アクセシビリティの改善を図りましょう。