データマーケティングコラム
ABC分析のメリットと適切な活用法
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現代のビジネスでは物やサービスを販売する上で、売り上げや利益の動向を正確に把握する分析が不可欠です。ベテランの現場責任者の直感が重要な役割を演じることもありますが、企業体として合理的で効率的な経営を促進するためには正確な数字と分析が大切です。ビジネス界には多種多様な販売や運営分析法があります。中でもすべての商品やサービスの販売実績などを数値化して、売り上げや粗利への貢献度をはじき出すABC分析は近代経営戦略に不可欠の分析法です。この分析の適切な活用が企業の成長に関与しますが、この分析結果だけでなく多様な分析も併用的に用いて多面的な分析をすれば、より安定的で成長率のある経営につなげることが可能です。
ABC分析とは
経営戦略において売り上げなどに関するデータを把握する基本的な分析法がABC分析です。商品の販売実績やサイトのアクセス実数など具体的な数値を算出し、すべての商品やサービスについて、今後の経営で優先させるもの、優先度を下げるものというようにランク分けをしながら合理的な商品管理をするために利用します。例えば商品の販売実績を3つに分類します。非常によく売れるグループをA、まずまずの売れ行きを示すグループをB、あまり売れないグループをCとします。グループ分けすることで、何を今後の主力商品にするべきなのかとか、どの商品を生産縮小したり、店舗の陳列棚から撤去したりするべきなのかといった決定をする際の分かりやすい指標が得られます。
この分析を理解するには、パレートの原則を知っておくことが大切です。パレートの原則は数理計算による経済理論ではなく実績から導かれた経験則で、80対20の法則とも呼ばれています。売り上げの8割は全製品のうちの2割の製品で占められているという原則です。この原則をバックボーンにして分析を行うことで、より効率的な事業運営に役立てるわけですが、さらに数字をグラフなどの図表にすると明確に全体の状況を把握できます。
分析目的
ABC分析は商品やサービスの売り上げなどを効率化して企業や店舗の経営力を高めることを目的として実施します。よく売れるAグループの商品やサービスは仕入れ量を増やす、もしくは店舗の中で消費者の目につきやすい場所へ商品を置くといった工夫をこらし、売れ行きをもっと伸ばすために分析結果を活用します。このように分析結果は、売れ筋であるAグループの在庫管理精度を上げたり店舗面積の占有率を拡大したりする際の重要な指標になります。これが分析の主要な目的ですが、同時に、Aグループに属する商品やサービスの想定外な売り切れや納期の遅延、不良品やトラブルといった全体の売り上げに響いてくるマイナス要因の発生抑制に役立てることも、分析の重要な目的になります。
一方、準主力商品群Bグループと非主力商品群のCグループについては、仕入れ量を減らしたり陳列する場所を移動や縮小させたりするといった行動を決定する際の検討材料として分析結果を適用します。経営的に大きなプラスにならない、マイナスに作用するといった商品やサービスについては、合理的な判断をすることで総体的な売り上げを伸ばして効率化を実現する効果を得ることにつなげるのが、分析の大きな目的となります。
ABC分析のやり方
ABC分析の具体的な手順は一般的に5つのステップがあります。仮に売り上げに対する貢献度を分析する場合の手順でいえば、第1ステップでは全製品をリストアップし、それぞれの売上数字を記録します。第2ステップでは全製品を売上数字が高い順番に並び替えます。第3ステップで全製品の売り上げを100パーセントとした場合の、個々の製品が占める売上数字の構成比率を算出します。第4ステップで、全商品をA、B、Cの3グループに分けるのですが、構成比率が高い商品の順番に数値を加算して累積構成比率を算出し、その値ごとにグループを作っていきます。例えば、この累積構成比率の値が70パーセントの範疇に入った商品群をAグループとします。引き続き構成比率を加算する作業を進め、70パーセントから90パーセント程度に達した商品群をBグループとし、それ以下の構成比率しか持たない商品群がCグループに属します。この時点で最低限度の分析は完了しますが、より精度を上げたい場合は第5ステップに進み、グループごとに製品を細かく分析します。それによりAグループに属する商品群の中では、売り上げ個数は少ないが単価が高いブランド製品の構成比率が高いのか、あるいは安い製品だが売上数が多いために構成比率の押し上げに寄与しているのかといったきめ細かな把握が可能になり、より精緻な分析結果が得られます。
まとめ
ABC分析の結果は、その後の適切な経営判断に生かすことが大切です。Aグループは主力商品ですから精度が高い在庫管理が必須になりますし、取引先との提携強化も含めた長期的かつ総合的な戦略が求められます。Bグループは今後の動向判断がポイントになります。最新の分析結果だけでなく、可能な限り過去にさかのぼった分析数値も含めて売れ行きの傾向を把握し、今後Aグループに昇格する可能性があるのであればテコ入れを行い、Cグループに移行する懸念が大きいのであれば縮小などの判断が求められるからです。Cグループについても、在庫を抱えすぎると経営にマイナスですが、その商品があるからこそAグループに属する商品が売れているという相関関係もあるため細かな判断が求められます。このため、この分析は主要な分析として位置づけつつ、可能な限り別の観点からの分析も加味するというバランス感覚が大切です。