データマーケティングコラム

誰でも測定できるNPSの結果を正しくビジネスに活かすためには?

Facebook X
NPSとは、誰でも比較的簡単に指標の測定ができ、結果の分析もしやすい評価手法です。特に難しい仕組みを用いなくてもアンケートだけで簡単にデータを取得し、分析することができます。しかしながら、分析結果をビジネスに活用する場合、その方法がよくわからないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで今回は、NPSの結果を正しくビジネスに活かす方法についてお伝えしていきます。

NPSについておさらい

NPSとはNet Promoter Scoreの略で、10点満点のスコアでその商品・サービス・ブランド等を、どの程度友人や同僚へ薦めたいと思うかを顧客へ質問する手法です。回答者の企業に対する信頼度や愛着の度合いを下記の基準で測定します。
 ・9~10点を付けた顧客を「推奨者」
 ・7~8点を「中立者」
 ・0~6点を「批判者」
回答者全体に占める推奨者の割合(%)から、批判者の割合(%)を除くことでNPSスコアが算出できます。


20220624_02

NPSスコアを正しくビジネスに活用するには

NPSは簡単に取得しスコア化することができる一方で、その結果を正しくビジネスに活用するには考慮すべきポイントが多く存在します。ここではNPSスコアを正しくビジネスに活用するためのポイントについてお伝えしていきます。

質問内容や対象者を熟考する

NPSで明確にしたい事柄や活用方針によって質問内容や対象者は変わってきます。そのため、自社の製品やサービスの内容に絞った質問にするのか、それとも自社全体の内容についての質問にするのかといった質問内容や対象者の熟考は必須です。利用者すべてが対象か、半年以内に製品やサービスを購入した人が対象か、また年齢や性別、住まいなどによっても意見が変わってきます。

質問の実施方法についても注意が必要です。購入後の顧客に直接とったアンケートとインターネットパネルのモニターに対するアンケートでは回答内容に差が出ることがあります。購入後のアンケートでは製品を購入した人が対象なので、顧客ロイヤリティは高めに出る傾向があり、反面モニターに対するアンケートでは不特定多数の人が対象になるため、顧客ロイヤリティも低めに出ることがあります。

NPSの結果を正しく取得・解釈することがビジネス活用のための前提となりますので、どのような内容を誰に対してどのように聴くのかについてはしっかりと意識するようにしましょう。

カスタマージャーニーを描き、フェーズごとにNPSを取得する

NPSを取得する前に、顧客行動に関してのカスタマージャーニーマップを作っておき、各フェーズに関連する要素に対してのNPSを取得していくと結果の解釈が行いやすくなります。

例えば自社ECサイトにおける商品購入についてのカスタマージャーニーマップを想定すると、大きく「ECサイトを見つける」「ECサイト上で商品を購入する」「購入した商品を利用する」の3つのフェーズに分けられます。この場合、「ECサイトを見つける」フェーズではECサイトに関する告知を行う媒体(自社SNSアカウントやメルマガなど)に関するNPS、「ECサイト上で商品を購入する」フェーズではECサイトそのものに関するNPS、「購入した商品を利用する」フェーズでは購入した商品に関するNPSとしてそれぞれ取得するのがよいでしょう。

このようにフェーズごとに聴取したNPSについてどの時点におけるスコアが低いのか、という観点で結果を確認することで、優先的に改善すべきポイントを把握することができるようになります。

定性評価も聴取し、併せて分析する

NPSスコアは定量評価であり、個々人の商品・サービスに対する評価の高低を数値で表す手法です。そのため、回答者が商品・サービスに対してどういった評価をしているかは把握できても、なぜそういった評価になったのかという解釈については限界があります。

こうしたNPSスコアの裏側にある背景を把握するためには、定性的な評価も合わせて取得しておく必要があります。例えばアンケート内に「そのように評価した理由をお答えください」というフリーコメント形式での設問を追加し、NPS区分(推奨者~批判者)ごとにコメントの内容を比較するだけでも多くのことが分かります。批判者からのコメントに含まれるワードの出現数をカウントすることで、優先的に改善すべき要素はどこにあるのか、といったより踏み込んだ分析も可能になります。

NPSとして取得した評価を解釈するためにどういった情報が必要か、という観点で追加聴取項目を選定することが重要です。

アクションドライバーチャートによる優先順位化

NPSの評価を構造的に解釈するためには、アクションドライバーチャートによる可視化が有効です。


アクションドライバーチャート


このチャートを作成するためには、NPSで聴取する商品やサービスに対する、より細かな要素ごとの満足度を聴取しておく必要があります。先ほどの「自社ECサイトに対するNPS評価」を例に挙げると、「サイト上の画面配置」「デザイン」「会員登録のしやすさ」「検索機能の使いやすさ」といったECサイトに対する評価を構成する要素ごとに満足度を聴取する必要があります。

アクションドライバーチャートの縦軸は、NPSスコアと要素ごとに聴取した満足度の相関係数の高低を表します。すなわち図の上側にくる要素(=相関係数の高い要素)ほど、自社ECサイト全体の推奨度に対して影響が高いものとなります。一方でチャートの横軸は、要素ごとの満足度の平均値を表します。すなわち図の左側に来る要素(=平均値が低い要素)ほど、現状のユーザーが不満に感じている要素となります。

このように可視化することで、チャート内の左上に位置するものは「NPSスコアに影響しやすいが現状満足を得られていない」として優先的に改善すべき要素、右上に位置するものは「NPSスコアに影響しやすくかつ現状満足を得られている」として重点的に維持していくべき要素、下側に位置するものは「そもそもNPSスコアに影響しづらい」ので改善優先度を下げるべき要素、とNPSを基軸とした改善アクションの優先順位付けが可能となります。

アクションドライバーチャートはNPSスコアの分析方法としては非常にシンプルではありますが、結果をビジネスへと活かすための解釈を行う上でとても有効な方法です。

店舗・現場スタッフへ還元しモチベーション向上

NPSの結果から次なるアクションを導き出すための分析も重要ですが、得られた結果を現場スタッフへ還元することもビジネス活用という文脈では大きな意味があります。良い結果であれば現場スタッフのさらなるモチベーション向上に繋がりますし、悪い結果であっても普段の行動に改善が必要であるという意識を醸成することができます。

何をすればNPSを向上させられるのか、どこの部署のNPSが高いか/低いか、問題点は誰がどのように改善していくのかなど、自ら主体的に考え行動していく店舗・現場を作り上げていくためにNPSの還元は大きな役割を果たします。その際はただNPSスコアを伝えるだけでなく、これまで解説してきた分析の視点も踏まえて結果を整理した上で、展開先のスタッフと優先改善ポイントに対する認識が合わせられるようにすることも意識しましょう。結果の解釈に適したカスタマイズダッシュボードを構築し、オンライン上での現場展開が可能であるBIツールの活用も有効です。

NPSの正しい活用には乗り越えるべき壁が多い

NPSは誰でも簡単に測定できる反面、ビジネスへの正しい活用のためには多くのことを意識する必要があります。NPSスコアを正しく取得・解釈するための調査設計や、得られた結果からアクションへと結びつけるための分析手法、その結果を店舗や現場へ還元し改善へと活かすための環境構築など、考えるべきこと・やるべきことは多岐に渡ります。

クロス・マーケティングではNPSを主軸とした調査の設計・実施・分析に加え、BIツールを用いた分析結果の共有環境構築も含めたトータルでのサポートが可能です。今回解説したNPSのビジネス活用に課題を感じている方はぜひお気軽にお問い合わせください。


■参考サイト:
https://www.salesforce.com/jp/hub/crm/nps/
https://journal.addlight.co.jp/archives/nps/
https://webtan.impress.co.jp/e/2017/08/02/26403
https://pottos.jp/media/media_list/CS/nps
https://jp.creativesurvey.com/blog/posts/nps-case-201908/
https://www.transcosmos-cotra.jp/what-is-nps
https://www.nttcoms.com/service/nps/summary/
https://s.creativehope.co.jp/invy/blog/nps
https://markitone.co.jp/column/nps/
https://liskul.com/nps-research-75688
https://markitone.co.jp/column/nps-analysis-tools/

関連コラム

マーケティングコラム
あの世代の呼び方は何?各世代へのマーケティング方法もご紹介
「団塊の世代」や「Z世代」など、生まれた世代によってさまざまな名称が付けられています。マーケティング担当者であれば、それぞれの世代の名称と特徴を把握し、世代ごとにあわせたマーケティングを実施しましょう。 本記事では、それぞれの世代の呼び方について説明し、各世代に合ったマーケティング方法を解説します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
独身の人が増えすぎている?未婚の割合や増加の理由を解説
結婚して家庭をもつことが当たり前だった時代からは一変し、生涯を独身で過ごす人が増えています。なぜ未婚率が高くなっているのでしょうか。今回は、未婚の割合や未婚の人が増えている理由について解説します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
中学生のスマホ使用時間の理想はどれくらい?スマホが及ぼす影響も紹介
近年、中学生からスマホを持たせる家庭が多いなか、使用時間の長さが問題視されているケースが多く見受けられます。スマホの使用時間が長いと学力に影響するといわれることもあり、子どもを持つ親からすると、「適切な使用時間の範囲で使わせたい」と考える方もいるようです。 今回は、中学生がスマホを使う時間の理想をはじめ、使用時間が長いとどのような影響を及ぼすのかを解説します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
犬派か猫派か?どちらが人気?性格や相性を徹底解剖!
ペットを飼っている人や、これから飼いたいと考えている人にとって気になるのが「犬と猫はどちらが人気なのか?」という点ではないでしょうか。また、犬派と猫派それぞれの性格や相性などについて気になる人も多いかと思います。本記事では、犬派と猫派どちらが多いのか、また性格や相性はどうかを徹底解剖します。弊社で行ったアンケート結果もふまえて解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
α世代の次の世代とは?β世代の特徴や取り巻く環境を予測しよう
今注目されているZ世代の次がα世代と呼ばれており、さらにその次がβ世代にあたります。Z世代以降は、デジタルネイティブであることが特徴ですが、マーケティング担当者や商品の開発担当者であれば、β世代とはどのような世代なのか、今と取り巻く環境がどのように変化しているのか気になるのではないでしょうか。今回は、β世代の特徴やβ世代を取り巻く環境について解説します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
推し活の経済効果はどれくらい?市場規模と推し活マーケティングのメリットとは
若年層に適確なアプローチができないなど、従来のマーケティング手法に限界を感じてはいませんか。商品やサービスのターゲットとして、「推し活に力を入れる消費者」に絞る方法もあります。 推し活とは、推し(お気に入りのキャラやアイドルなど)を応援する活動のことです。今回は、推し活の経済効果や企業が推し活マーケティングに力を入れるメリットについて紹介します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
団塊の世代はいついなくなる?高齢化で生じる問題と対策を紹介
団塊の世代は、全人口に占める割合の大きさから、社会に多大なる影響を与えてきました。高齢化の話題に接して、団塊の世代の存在感に驚いた方もいるのではないでしょうか。今回は、団塊の世代の高齢化問題と企業の対策について紹介します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
デジタルマーケティングコラム
【TikTok】バズる時間帯はいつ?曜日ごとのバズりやすさとあわせて解説
TikTokは短期間で多くのユーザーにリーチできるプラットフォームです。しかし、効果的な運用には、適切な投稿時間を見極めなければなりません。社内でTikTokの運用を開始する際に、まず押さえておくべきなのが「バズりやすい時間帯と曜日」です。今回は、TikTokでバズるために最適な投稿時間や曜日について詳しく解説し、投稿時に押さえておくべきポイントについても紹介します。
# デジタルマーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
デジタルマーケティングコラム
SNSのエンゲージメントとは?SNS別の確認方法や向上施策も紹介
最近では中小企業でも、流入チャネルを増やすためにSNS活用を始めるところが増えてきました。SNSの運用を成功させるためには、できるだけ多くのエンゲージメント(リアクション)を得ることが重要です。今回は、SNSにおけるエンゲージメントについて、確認方法や向上させるための施策を解説します。
# デジタルマーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
ご相談・お見積もり依頼
【法人・個人様】
フリーダイヤルでのお問い合わせ
0120-198-022
※ モニター様からのお電話でのお問い合わせは受け付けておりません。
資料ダウンロード