データマーケティングコラム

データ統合の視点から考える、マーケティング組織と営業組織が連携することの価値

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マーケティング組織が予算を獲得しようとしたときに経営層から言われて困りがちな質問として、「ROIはどうなの?」、「コストパフォーマンスは考えているの?」、「で、売上はあがるの?」といった質問が挙げられます。

経営層に評価されにくいマーケティング組織

企業を存続させるには売上と利益は必須ですから、経営層がこういった売上やコスト目線で物事を考えることは当然と言えば当然なのですが、営業組織と違って直接的に売上に関与することが少ないマーケティング組織にとっては鬼門となりがちです。

というのも、これらの質問に回答しようとしたときに売上の議論を省いてしまうと『いかにコストを抑えられるか』という節約論になってしまい、年々コスト削減を課されて規模縮小していくという悪循環に陥りがちだからです。この先にあるのは残念ながら、『企業の中で大きな存在価値を発揮できず、花形部署になれないマーケティング組織』という姿です。

営業組織のデータを紐づけることで見えてくるリードの品質

そんな悪循環から脱出する一つの方法として、マーケティング組織が獲得したリード(見込み客)に営業組織のデータを紐づける方法があります。具体的には、売上データや顧客満足度調査の結果を紐づけていくことで、営業組織へ供給したリードが売上にどういうインパクトがあったのかを実直に分析していくのです。

残念ながら多くの企業では、マーケティング組織のデータと営業組織のデータは別々のシステムで別々のデータベースとして管理されているため、紐づけると端的に言っても、具体的には多くのデータ統合作業が発生します。

同一の顧客ID(リードID)が振られていれば、そのIDをキーとしてデータを結合していくだけで分析が可能です。ただし、実際の現場では同一のIDが振られていないことも多く、企業名や担当者名、メールアドレスなどで名寄せをしたり、過去の組織間のワークフロー履歴を遡ったり、場合によっては当時の担当者へのヒアリングが必要になったりします。もし、そもそもの情報がデータベース化されていない、つまり複数のExcelファイルのままファイル共有サーバーの至る所に散在しているとか、紙のデータがPDFとしてのみ保存されているといった状態だったりすると、このデータ統合作業は非常に負荷の大きなものとなります。

また、一口にデータを紐づけると言っても、営業組織のデータは営業組織の管轄であるがゆえにマーケティング組織のメンバーには自由な閲覧権限がない可能性もあります。そのような場合には、まずデータを共有してもらう業務調整から入らなければならないため、プロジェクトの負担がさらに大きくなります。

しかし、こういった実務的な障壁を乗り越えて、マーケティング組織が獲得したリードに売上データや顧客満足度調査の結果を紐づけることができると、リード獲得のマーケティング施策を売上やブランドロイヤルティなど様々な観点から分析できるようになります。マーケティング施策ごとに獲得したリードがどれだけの売上になったか、また長期的な売上であるLTV(ライフ・タイム・バリュー、顧客生涯価値)はどれくらい見込めそうなのか、といった売上換算の議論が可能になるのです。

その分析の先では、アクセスログやメールログといったリード段階の行動データをもとに、『どれくらい質の高いリードなのか』を売上やブランドロイヤルティの実データを根拠に推定するモデルを作成することが可能になると考えられます。もちろんモデル適用時にはリードの行動データのみをもとに推測するわけですから精度は著しく高いとは言えませんが、データによる根拠に乏しい『メール開封3件以上』といったような機械的な線引きよりは遥かに高い精度であると言えるでしょう。

リード品質の推定で実現する営業組織とのダイナミックな連携

営業組織のデータを紐づけてリードの品質を推定できるようになると、営業組織との連携がダイナミックになってきます。というのも、品質が推定できるようになると、営業組織に受け渡すホットリードの基準値の調整や優先順位の変更で、営業組織へのリード供給を調整できるようになるからです。

2019年4月に『働き方改革関連法』が施行されてからは、限られた業務時間の中で仕事をすることを求める傾向がより一層強くなるようになりました。そのため、今まで繁忙期だった時期に労働量を抑え、また逆に閑散期だった時期に労働量を増やすことで、全体的な繁閑の波を抑えて安定的に労働できるようにする仕組みが組織運営として重要になってきました。

なぜここで働き方改革の話を持ち出したかというと、リード品質の推定による営業組織へのリード供給の調整が、ずばり労働量の波の安定化に貢献できる仕組みであり、結果としてマーケティング部門が売上の安定化に貢献できる仕組みであるからです。

例えば一つの例を挙げると、リード品質に基づく推定セグメントとして、①売上化までの足が短いリード、②売上化までの足は長いがLTVは高いリード、の2つを抽出したとします。すると、直近の売上見込みが少ないときは①を多めにリード供給して短期的な売上増を強化し、直近の売上見込みはあるが労働量に余裕はないときは全体的にホットリードの基準値を上げることでリード供給自体を抑えぎみにして営業負荷を下げ、直近の売上見込みも労働量の余裕もあるときは②を多めにしてLTVという長期的な売上貢献に人的リソースを優先的に回す、といった調整が可能になると考えられます。

こういった連携を実現する過程では、マーケティング組織と営業組織双方が売上達成と組織的安定という同一の高い経営目標を実現するためのコミュニケーションが発生し、単なるデータのやり取り以上に、お互いの業務における定性的な知見の共有による認識のすり合わせまでもが推進されていくため、文字通りダイナミックな組織連携の契機となりえるでしょう。

行動データ×意識データで可視化するブランディング効果

ここまでは営業組織のデータを掛け合わせることでリード獲得効果をどこまでダイナミックに出来るかを議論してきました。しかし、マーケティング施策による効果はこのリード獲得だけではありません。というのも、マーケティング施策による効果は大別すると、リード獲得効果とブランディング効果の2つがあるからです。

デジタルマーケティングが普及して直接的に効果測定ができるリード獲得効果が脚光を浴びる中で、ブランディング効果といえば『重要とは思われているけれども数値化されにくいために優先順位を下げられやすい』候補の筆頭であると言わざるを得ません。特にROIやコストパフォーマンスの議論となると、なかなか具体的な数字を提示できずに歯がゆい思いをしたことのあるマーケターの方は多いのではないでしょうか。

しかし、ブランディングを軽視してリード獲得ばかりに注力してKPIを追っていくと、とにかく目を引くコンテンツばかりを作るようになったり、少しでも目前のコンバージョンがとれるコンテンツに走ったりしがちです。その結果、たとえ短期的にコンバージョンが上がったとしても、ひっそりと閲覧者のブランドイメージを棄損してしまったり、SNSで炎上が起きて拡散してしまったりするなどで、中長期的にはブランドが取り返しのつかない状態になってしまう可能性もあります。

そのため、様々なマーケティングツールを活用して膨大な行動データが取得できるようになった昨今において、コンテンツに触れた顧客がどんな意識変容を起こしているかは、より一層しっかりとウォッチしていく必要があるとも言えます。

幸いなことに、最近のMA(マーケティングオートメーション)ツールやWeb接客ツールといったマーケティングツールでは、サイト訪問者やメルマガ購読者に対して簡単にアンケートを投げかけることで行動データと意識データを掛け合わせた分析ができますし、そのようなツールを使っていない場合でもGoogle Analyticsなどのアクセス解析ツールやリターゲティング広告などを活用することでアンケートを投げかけることも可能です。

ひとたび行動データと意識データを組み合わせることができれば、取得していた膨大な行動データを軸に意識データを集計していくことで、『どういった行動をとるとどんなブランドイメージを獲得するか』をデータをもとに探索的に検証していくことが可能になり、ともすればコンバージョンを追いかけるばかりになりがちなデジタルのマーケティング施策を、ブランディング効果をもとに設計できるようになります。

もちろん顧客満足度調査を通じてどういったブランドイメージがブランドロイヤルティの高さに通じているかを検証することも可能であるため、それらを組み合わせることで、ロイヤルカスタマーを育てるブランディング効果を狙っていくことも可能であると考えられます。これは売上データにアクセスログやメールログを統合し、かつ意識データも統合していくデータ活用であるため、分析負荷も高く、設計段階から専門的な知見が必要になってきます。

クロス・マーケティングでは、マーケティングリサーチ企業として長年培ってきたアスキングによる意識データの取得・分析の実績を基盤としつつ、各種デジタルマーケティングツールを活用した意識データの取得や、行動データと掛け合わせた分析、また施策への落とし込みを支援しております。このようなデータ活用支援にご興味のある方は、ぜひ営業担当もしくはお問い合わせフォームからご相談くださいませ。

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