データマーケティングコラム
One to Oneマーケティングを実現するための『カスタマージャーニー型データ分析』というソリューション
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事業の売り上げを伸ばすために顧客データを収集して活用するという動きは、広く一般的なものになってきました。とりわけ2019年4月に『働き方改革関連法』が施行されてからは、限られた業務時間の中で今までと同じ成果を出せるように、そして今まで以上の成果を出せるようにビジネスを飛躍させるために、データ活用を全社的に推進しようとする動きが活発になってきました。
働き方改革の切り札となったデータ活用
前述した動きと呼応するかのように、データを収集したり、加工したり、統合したり、可視化したりするためのサービスの開発・提供も盛んになってきました。背景には、一昔前だとセキュリティ上の懸念から忌避されがちだったクラウドサービスが、劇的なスピードで変化するビジネス環境に対応するためにむしろ有効であるという見方をされるようになってきたことや、IoTを活用することでデジタル領域だけでなくリアルでもデータ取得できるようになったこと、今まででは人が介在しないとできなかった高度なデータ処理をAI(人工知能)を活用することで自動化できるようになったこと、などの技術革新もあります。こういったトレンドにおいて、データの全社的な活用はいわゆるデジタルに特化したIT企業の専売特許ではなくなり、「売上を飛躍的に増やしたい」「業務を抜本的に改革したい」と考える全ての企業が挑戦できるものになったと言っても過言ではないでしょう。
データ活用で真っ先に挙げられる売上データ
データ活用を企業が考えるとき、真っ先に挙げられるのが売上データです。というのも、売上データはどんな企業でも既に保有しているためすぐに着手ができる点、そして"売上"のデータであるがゆえにその分析が売上の向上に直接的に寄与しやすく、経営層への響きが良い点が魅力となるからです。しかし、一口に売上データの分析と言っても内容は千差万別です。ここでは分かりやすくするために、多様な売上データの分析を分析軸によって分類してみましょう。
次に、商品軸による集計があります。有名なものには、商品ごとに売上を集計してランキング化するABC分析や、一緒に購入されるものを明らかにするアソシエーション分析(連関分析)等があります。どの商品がたくさん売れているか、また逆にあまり売れていないかを明らかにすることで商品の棚卸しに活用したり、営業・販促施策の検討に活用したりなどができます。
その次の顧客軸による集計は、マーケティング施策を考えるための顧客セグメンテーションが該当します。具体的には、直近購入日(Recency)、購入頻度(Frequency)、購入金額(Monetary)の3指標によって顧客をグループ化するRFM分析や、購入金額の大きい順に並べて10分割にてグループ化するデシル分析が有名です。どちらも顧客を一定のルールに基づいてグループ化して特徴を分析することで、セグメントごとにマーケティング施策を検討・実施するのに役立ちます。
統合データをもとに顧客軸で時系列分析を行う『カスタマージャーニー型データ分析』
商品軸による集計、顧客軸による集計は、どちらもデータを活用してしっかりと業務に活かしているわけですが、昨今の消費者事情を鑑みるに、もう一歩踏み込んだデータの活用を考えたいところです。というのも昨今の消費者からすれば、例えばECサイトを開けば自分自身が購入しそうな商品が表示されますし、ニュースアプリを開けば自分自身が興味を持ちそうなニュースが表示されるような時代なわけです。それは、自分の属するざっくりとしたセグメントに向けた情報接触ではなく、自分自身の行動や意識に合わせられた情報接触です。生き方の多様化が進む日本においては、相手の属するざっくりとしたセグメントに向けた情報接触だと自分事として認識してもらいづらくなっているため、いかに個人に合わせたマーケティングアプローチを設計できるかが重要になってきています。
もちろん、個人の行動や状況に合わせたマーケティングアプローチを実現するには、個人ごとに行動データや意識データを収集し、個人ごとに時系列で分析して、個人ごとにマーケティング施策を変えていくOne to Oneのアプローチが必須になってきます。この分析アプローチを弊社では『カスタマージャーニー型データ分析』と呼んでいますが、そこには言葉以上の難しさがあります。
難しさの原因の一つ目に、個人ごとに分析するためにデータの処理量が膨大になることがあります。商品軸や顧客軸の集計では、分析手法に則って集計をした後は比較的軽い集計表のデータになるため、その後の分析が容易です。一方の『カスタマージャーニー型データ分析』では、分析対象のデータの特性を見極めながら探索的に顧客一人一人の状態を表現するための分析モデルを構築していくため、最後までデータの処理量が落ちず、分析の負荷が非常に大きくなります。Excelでは分析に耐えられないことも多いため、専用の分析環境を構築してから臨むことが多いです。
難しさの原因の二つ目には、アクセスログやメールログといったデータソースの異なる行動データを統合する場合に、特殊なナレッジが必要な点が挙げられます。売上データ以外に有名な行動データとしては、ウェブサイトの訪問履歴であるアクセスログと、配信したメールの開封履歴やクリック履歴などを把握できるメールログがあります。昨今のマーケティング現場では、MA(マーケティングオートメーション)ツール、Web接客ツール、CDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)、DMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)などを使ってこのようなデータを取得する企業も多くなっており、売上データと組み合わせて幅広く顧客のカスタマージャーニーを把握していく動きは活発になっています。ただし、データソースが異なれば、データの型が異なったり、ログの取得タイミングが異なったり、顧客IDが異なったりなど、統合しようにも落とし穴が多く存在します。また、データを統合する運用を組織として安定化させることにも別の落とし穴があります。こういった落とし穴にはまらないためのナレッジはなかなか初見で持ち合わせていることは難しいため、こういった統合的な分析の難しさの一因となっています。
そして最後の原因として、『カスタマージャーニー型データ分析』が真の価値を発揮するには、これら行動データに意識データを統合する必要がある点が挙げられます。もちろん売上データやアクセスログ、メールログといった行動データを統合して分析するだけでも多くのことは分かりますが、行動データだけでは顧客がどれだけブランドに執着しているか、つまりブランドロイヤルティが高いかどうかは分かりません。
極端な話でいえば、売上データがたくさんある顧客のブランドロイヤルティが必ず高いかというとそうではなく、近くの店舗でその商品しか売っていないからそればかり買っているのかもしれないですし、他の人に頼まれて買っているのかもしれません。そういった顧客をブランドロイヤルティの高い顧客だと誤解してOne to Oneのマーケティングアプローチを展開してしまうと、気持ちの温度差のずれからブランドイメージを棄損しかねません。
また逆に、あまり売上データがない顧客でも、物持ちが良かったりお金に余裕がなかったりなどの理由で買う回数自体は少ないもののブランド自体は大好きな顧客も多くいます。このような顧客をしっかりと認識し、ブランドロイヤルティの高い顧客としてOne to Oneのマーケティングアプローチを展開できれば、劇的な効果が見込めます。アンバサダー的な形でブランドを周りに好意的に発信してくれる可能性は高いですし、そのアプローチを直接的なきっかけとして購入頻度が向上するかもしれないですし、長期目線で顧客としてもたらしてくれる価値であるLTV(ライフ・タイム・バリュー、顧客生涯価値)には目を見張るものが出てくるでしょう。
そのため、顧客一人一人に合ったマーケティングアプローチを実現するための『カスタマージャーニー型データ分析』では、LTVを最大化するという視点において、いかにブランドロイヤルティの高低を見抜くかという点が欠かせません。これが、『カスタマージャーニー型データ分析』が難しい最後の原因であり、弊社のようなマーケティングリサーチ企業があらゆるデータの活用を支援する『データマーケティング』サービスを提供するに至った理由でもあります。
クロス・マーケティングでは、マーケティングリサーチ企業として長年培ってきたアスキングによる意識データの取得・分析の実績を基盤としつつ、クライアントニーズに合わせたフルカスタマイズのデータ分析サービスを提供してきた結果、近年では意識データだけでなく行動データも分析支援するようになり、さらには意識データと行動データを掛け合わせたデータ活用支援を行うようになりました。このような分析を実際に行い、実際に施策に落とし込み、実際に組織としてグロースハック的に運用していくには多くのナレッジが必要です。このようなデータ活用支援にご興味のある方は、ぜひ営業担当もしくはお問い合わせフォームからご相談くださいませ。
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