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【後編】国連との協働もスタート。世界で受け入れられるキティのSDGs活動

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サンリオのキャラクター、ハローキティの公式YouTubeチャンネル「HELLO KITTY CHANNEL」では、開設以来SDGsを応援している。2019年9月にはその活動が認められ国連との協働で「#HelloGlobalGoals」の動画シリーズの配信がスタート。活躍の場はより一層グローバルに拡大している。また、キティちゃんの活動はサンリオ社内にも影響を与えているのか、引き続き前田 南美氏と工藤 瞳子氏に話を聞く。

キティが届けたい想いは、世界でも受け入れられている

堀:「SDGs応援シリーズ」に加えて国連と協働で「#HelloGlobalGoals」動画シリーズの配信も始まっています。こちらでは6つのゴールについて活動されているようですね。

前田:「SDGs応援シリーズ」では渋谷の駅前にあった電車車両、通称「青ガエル」でのダイバーシティの啓発活動「HELLO DIVER CITY」など、さまざまな活動を行なってきました。そうした活動実績が認められて、2019年9月からは正式に国連との協働につながっています。その過程として、アミーナ・モハメッド国連副事務総長との電話会談や、ニューヨーク国連本部での発表などはチャンネル内でも公開しています。
 キティはSDGsの特定のゴールや項目に注力するのではなく、活動全体を応援していますが、「#HelloGlobalGoals」では3、4、5、11、13、14の6つのゴールを取り上げています。これは、キティとしてアプローチしやすく、かつSDGsとの関わりが薄くなりがちな子どもや若い女性たちに向けて、意識してもらいやすいテーマが選ばれています。このテーマに関しては、国連が今、注力しているテーマでもあります。


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国連本部SDGsメディアゾーンにて国連との協働を発表したときの様子。


堀:国連との取り組みがスタートして、海外からのリアクションは増えましたか。また、反応として国内との違いはあるのでしょうか。

前田:国内だから、海外だからという反応の差はあまりないようです。海外の方も日本と同じように動画から気づきがあるようで、キティが届けたい想いが世界で受け入れられているのだなと感じています。
 取材先対象も国内の動画が一般の団体や企業の活動を紹介している一方、「#HelloGlobalGoals」は、国連から紹介された機関に取材しているという違いもあるので、単純な比較はできないかもしれません。


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バングラデシュのロヒンギャ難民キャンプにて。


堀:国内の企業とのコラボレーションも行われていますね。

工藤:最初に企業との取り組みとなったのはアドビさまです。アドビさまは自社のツールを教育機関に無償提供するなど、教育に力を入れていらっしゃる企業です。学生向けにクリエイティブアイディアを競うコンテストも開催されていて、コンテストのテーマとしてSDGsが採用されることになり、そのイメージキャラクターにキティを起用していただきました。今年の3月に優秀作品が選出され、サンリオピューロランドで授賞式を行う予定だったのですが、現在の新型コロナウイルス感染拡大の影響でできなくなってしまい残念でした。
 今年は、新たに講談社さまの幼児向け雑誌「おともだち」でキティと一緒にSDGsを学ぶ連載がはじまっています。1年間に渡って、キティをナビゲーター役として毎月ひとつのゴールを解説するものです。講談社さまは企業としてもSDGsに熱心に取り組まれており、先日発売されたワンテーママガジン「FRaU」のSDGs特集号でも表紙にキティを起用していただきました。

堀:コラボレーションは、お声がかかることが多いのでしょうか。

工藤:企業として意識的にSDGsに取り組んでいるところは、情報感度が高く、キティの活動もチェックしていただいています。ニューヨーク国連本部での発表や、弊社の展示会でも活動内容をお伝えしているので、そうした機会に知ってお声がけいただくケースも増えてきました。

まずは知ることからスタートして、自分ごととして考えることが必要

堀:SDGsはサンリオさんの企業理念にも通じるところがあるというお話もありました。キティちゃんの活動をはじめて、サンリオさんの社内でも変化はあったのでしょうか。

工藤:今でこそ認知されはじめていますが、「HELLO KITTY CHANNEL」を始めた頃は、まだSDGsという言葉を聞く機会もそう多くありませんでした。当社としてもキティが活動を始めるまで知らなかった、理解していなかった社員も少なくありませんでした。会社としての取り組みをキティが先陣を切って進めているような形で、私たちも少しずつできるところからはじめている段階です。
 サンリオピューロランド・ハーモニーランドの一部レストランで提供する飲み物のストローを紙製に変えることや、今年のレジ袋有料化に先立って、紙製のショッパーへの切り替えなどを行なっています。一度に大きく変えるにはたくさんの組織や人の協力が必要になるので、まずは身の回りのことでできることはないか考え、手をつけられるところから変えようとしています。

堀:社内も含めて、SDGsが浸透し、広がっていくために大切なことは何でしょうか。

前田:まずは知ること。そこからスタートして、自分ごととして考えることが必要だと感じています。SDGsで扱うテーマは「貧困」「ジェンダー」「環境」「福祉」と、堅く難しいイメージもあります。そこをやわらかく伝え、取り組みへのハードルを下げることがキティに期待されていることだと考えています。キティ自身も視聴者と同じ目線で学び、わかりやすくポジティブなメッセージを発信できるように心がけています。


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ヨルダンのザアタリ難民キャンプ訪問の様子。パソコン教室を見学するキティ。


堀:これまでの連載でも感じているのですが、すでにSDGsに取り組んでいる企業や団体、個人は、特定のゴールを意識していない。もともとあった活動がSDGsのゴールと結びついているように感じます。

前田:おっしゃる通りでいろいろな会社の方とお話をしても、みなさんSDGsという概念ができる前から社会や地球のために活動していることがベースにあります。SDGsだからということではなく、やってきたことが結果的に何番のゴールと重なるという話も多く聞きます。
 キティの取材を受けていただく方々も、ゴールの達成だけを目的に活動されているわけではありません。活動の背景にある想いを聞いて、紹介した先にSDGsのゴールがあると気づいていただけるヒントになればいいなと考えています。

堀:今、新型コロナウイルスの影響で新たな生活様式「ニューノーマル」が求められています。ニューノーマルの時代にもSDGsが果たす役割はあるのでしょうか。

前田:SDGs自体、今の地球が抱えているさまざまな問題を乗り越えて、健康で平和に生きていくために必要な行動です。目の前にせまるウイルスに危機感を覚えることはあると思いますが、SDGsはそれも含めたより長期的な視点での課題だと感じています。
 「HELLO KITTY CHANNEL」の取材も現地に行けないことが増えるかもしれませんが、できることを探しながら続けていきます。

取材後記「インサイトスコープ」

今回のコラムはキティちゃんへの取材から始まった。キティちゃんと直接会うのは初めてだったが、熱意ある言葉を聞いてなぜかほっこりとした気分になった。世の中にはSDGsに関する記事が溢れているが、難しくてわかりにくいものが多い。私たちにとって、考えなければいけない問題だということは理解できるが、実際に何が出来るのか、つまりSDGsをより大衆化することが目前の課題である。
キティちゃんは「SDGs達成のために何か手助けがしたい」と、人々にSDGsは自分たちの身近なことだということを気づかせてくれるアンバサダーだった。キティちゃんの親しみやすさは、「キティちゃんが言うなら聞いてみよう」というように、世代を超えてSDGs活動の裾野を広げている。今は、SDGsという言葉をただ認知するだけではなく、「私にできるSDGs」を行動に移す段階に入ってきた。これからも引き続き、キティちゃんの活動に期待したいと思う。

堀 好伸(株式会社クロス・マーケティンググループ)

株式会社サンリオ
担当者

前田 南美

株式会社サンリオ
担当者

工藤 瞳子

堀 好伸
株式会社クロス・マーケティンググループ
リサーチ・コンサルティング部 コンサルティンググループ コンサルティングディレクター

堀 好伸


<プロフィール>
生活者のインサイトを得るための共創コミュニティのデザイン・運営を主たる領域とする生活者と企業を結ぶファシリテーターとして活動。生活者からのインサイトを活用したアイディエーションを行い様々な企業の戦略マーケティング業務に携わる。「若者」や「シミュレーション消費」を主なテーマに社内外でセミナー講演の他、TV、新聞などメディアでも解説する。著書に「若者はなぜモノを買わないのか」(青春出版社)、最近のメディア出演「首都圏情報 ネタドリ!」(NNK総合)、「プロのプロセスーアンケートの作り方」(Eテレ)

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